墓石が鼾する頃

映画『墓石が鼾する頃』についての詳細

『墓石が鼾する頃』（はかいしがいびきするころ）は、1925年に公開された日本のサイレント長編劇映画であり、二川文太郎が監督を務めました。この映画は剣戟映画の先駆けとされており、「マキノ悪魔派映画」として知られる一連の作品の第一弾となっています。作品のタイトルには、資料によって「墓石が鼾をする頃」とも表記されることがありますが、公開当時のポスターには『墓石が鼾する頃』と記載されています。

映画の背景

本作は、東亜キネマによって配給され、同年の5月15日に浅草公園六区の大東京を皮切りに全国で公開されました。この上映にあたっては、聯合映画芸術家協会が製作した新国劇『月形半平太』の初映像化作品も同時に上映されました。この作品は衣笠貞之助が監督を務め、沢田正二郎が主演を務めています。

当時の映画批評家である滝沢一によると、本作は「悪魔派」と称される一連の作品の最初に位置づけられており、主演を担当した岡島艶子は、本作の直後に悪麗之助監督から手掛けられた、同じく寿々喜多呂九平の脚本による『蜘蛛』が続くことを指摘しました。

現存状況

『墓石が鼾する頃』の上映用プリントは、現在東京国立近代美術館フィルムセンターやマツダ映画社には所蔵されておらず、現存しないとされています。また、大阪藝術大学のリストにもこの作品は見当たりません。一方で、観賞することができないこの映画は、国内外の映画ファンにとって非常に貴重な存在であると言えるでしょう。

公開時のポスターには次のような煽り文句が掲載されていました。「恋を弄ぶ魔性の美女と、其美に幻惑されて醜くも鬩ぎ争ふ人々の群れ変態性の女を主材として・・・ 鬼才寿々喜多呂九平氏が得意の鋭き筆に描き出せる凄妖怪奇の物語り・・・」

スタッフとキャスト

本作の総指揮には牧野省三が名を連ね、監督は二川文太郎が務めました。原作と脚色は寿々喜多呂九平、撮影は宮崎安吉が担当しました。映画は88分（8巻 / 2,438メートル）の白黒サイレント映画として制作され、フォーマットはスタンダードサイズ（1.33:1）です。本作の主要キャストには、以下の人物が含まれます。

• - 岡島艶子 - 皷匠の嬢百合女
• - 阪東妻三郎 - 若き侍進藤平太秀清
• - 中村吉松 - 阿部五郎宗遠
• - 岩城秀哉 - 鳴海源太盛高
• - 高松錦之助 - 行連三郎実盛
• - 市川花紅 - 皷匠經友
• - 桑原卓 - 弟子行友
• - 光岡龍三郎 - 弟子定友
• - 中根龍太郎 - 弟子末友

映画『墓石が鼾する頃』は、日本映画の歴史の中で特に興味深い位置を占める作品であり、その影響は現在でも色濃く残っています。悪魔派映画というムーヴメントの始まりを告げる本作は、今後も映画研究の重要な資料として注目され続けることでしょう。

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