滝沢一

滝沢一の生涯と業績

滝沢一（たきざわ おさむ）は、1914年大阪に生まれ、1993年に生涯を閉じた映画評論家、ジャーナリスト、そして脚本家です。彼は株式会社通信合同社の代表を務め、映画界に多大な貢献をしました。また、中川信夫との共同ペンネーム「猿沢丈介」としても知られています。

初期の活動

大阪府立市岡中学校を卒業後、1933年に京都で合同通信社を設立しました。これが後に株式会社通信合同社となります。1935年には、友人である中川信夫とともに脚本を執筆し、『恥を知る者』や『御用唄鼠小僧』などの作品で共同監督を務めました。

映画界への貢献

1951年、『わが一高時代の犯罪』の映画化に際して、岡田茂プロデューサーとの映画化権料交渉を担当しました。1970年代には、東映京都撮影所の「ピラニア軍団」に、深作欣二、中島貞夫らとともに参加し、相談役を務めました。また、1971年には、牧野省三の回顧録『回想・マキノ映画』に『牧野省三評伝その人と業績』を寄稿しました。1973年には、山中貞雄のデビュー作をモチーフにしたテレビ映画『抱き寝の長脇差』の脚本をマキノ雅弘と共同で執筆しました。

映画史研究と資料編纂

滝沢は、映画史研究にも力を注ぎました。キネマ旬報社が刊行した『日本映画監督全集』や『日本映画俳優全集』の執筆に参加し、貴重な資料を提供しました。特に伊藤大輔、山中貞雄の研究においては、第一人者として知られています。1982年には、通信合同社の代表に就任。同年、中川信夫の遺作『怪異談 生きてゐる小平次』の製作にも企画として参加しました。1987年には、山根貞男と共著で『映画監督 中川信夫』を上梓し、亡き友人を偲びました。また、山中貞雄の命日には「山中忌」を主催し、その功績を称えました。

晩年と遺産

1993年、脳梗塞により78歳で逝去。最後の執筆は『キネマ旬報』に掲載された『私の伊藤大輔』でした。没後、その功績を称えられ、第35回牧野省三賞特別賞を受賞しました。

フィルモグラフィ

『恥を知る者』（1935年） - 脚本（中川信夫と共同、猿沢丈介名義）
『御用唄鼠小僧』（1935年） - 原作・脚本（中川信夫と共同、猿沢丈介名義）
『海賊旗吹っ飛ぶ』（1943年） - 共同脚本
『長谷川伸シリーズ』第23話『抱き寝の長脇差』（1973年） - 共同脚本
『怪異談 生きてゐる小平次』（1982年） - 企画

ビブリオグラフィ

『牧野省三評伝その人と業績』（1971年）
『成瀬巳喜男論』（1971年）
『日本映画監督全集』（1976年） - 部分執筆
『日本映画俳優全集・男優編』（1979年） - 部分執筆
『日本映画俳優全集・女優編』（1980年） - 部分執筆
『映画歳時記』（1984年）
『映画の青春期と時代劇映画 - 伊藤大輔研究その1』（1985年）
『和魂洋才と男のロマン - 伊藤大輔研究その2』（1985年）
『時代劇映画の第一人者 - 伊藤大輔研究その3』（1985年）
『解説 山中貞雄』（1985年）
『映画監督 中川信夫』（1987年）

滝沢一は、その多岐にわたる活動を通じて、日本映画史に大きな足跡を残しました。彼の研究と著作は、今後の映画研究においても重要な資料となるでしょう。

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