増誉

増誉（ぞうよ）は、平安時代中期の天台宗の僧で、長元5年（1032年）に生まれ、永久4年（1116年）に85歳で没しました。俗姓は藤原氏で、父は大納言藤原経輔です。一乗院大僧正とも称されました。

生涯

増誉は、園城寺（三井寺）の僧・乗延（じょうえん）に師事し、行円（ぎょうえん）の下で得度を受けました。さらに、行観（ぎょうかん）から灌頂を受けるなど、天台宗の僧としての基礎を築きました。早くから山岳修行にも励み、大峰山や葛城山で厳しい修行を重ね、霊験を現したと伝えられています。

また、増誉は、白河天皇と堀河天皇の二代にわたり、護持僧として朝廷に仕えました。特に、白河上皇からの信任は厚く、寛治4年（1090年）には、白河上皇の熊野参詣の先達を務め、その功績により最初の熊野三山検校に任じられました。この時、洛東に聖護院を建立しています。増誉は、天王寺別当や園城寺長吏といった要職も歴任し、長治2年（1105年）には天台座主に任命されました。しかし、延暦寺からの強い反対を受け、天台座主の地位は翌日には辞任せざるを得ませんでした。その後、尊勝寺をはじめとする13ヶ寺の別当を兼任し、寺院の運営に尽力しました。

増誉の死後、園城寺長吏の職は行尊（ぎょうそん）が引き継ぎました。増誉は、その生涯を通じて、天台宗の発展に大きく貢献しました。山岳修行で培った高い霊力と、朝廷からの厚い信頼を背景に、僧侶として、また宗教指導者として、多岐にわたる活動を展開しました。特に、熊野三山検校としての活動は、熊野信仰の発展に大きく寄与したと言えるでしょう。また、聖護院の建立は、後の寺院の発展に大きな影響を与えました。

増誉は、平安時代中期における天台宗の重要な人物の一人として、その名が歴史に刻まれています。彼の業績は、当時の宗教界だけでなく、政治や文化にも大きな影響を与えたと考えられます。


参考文献
* 関口力「中関白家と熊野ー隆家と増誉を中心として」（国學院雑誌 80(10)、p48-58、1979-10）

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