墨攻

『墨攻』について

『墨攻』（ぼくこう、ぼっこう）は、著者である酒見賢一による歴史を背景にした小説で、1991年に新潮社から初版が出版されました。その後、1994年に新潮文庫版、2014年には文春文庫版が刊行されています。この作品は、中国の戦国時代を舞台にし、墨子教団の一員として平和を求め、戦争から人々を守る役割を果たす男の奮闘を中心に展開されています。

本作は第104回の直木賞候補となり、1992年には中島敦記念賞を受賞しています。タイトルの「墨攻」という言葉は、著者が旧来の「墨守」をアレンジして作り出したもので、同名の映画や漫画も存在しますが、香港では「墨子攻略」という名前で出版されています。

メディアミックス

1992年から1996年には、本作を基にした漫画が小学館の「ビッグコミック」で連載されました。そして2006年には日中韓の合作映画『墨攻』が公開され、森秀樹の漫画版を原作としています。なお、押井守は、この小説を基にした映画化の構想を持っていたものの、実現には至りませんでした。

あらすじ

「墨家」の思想を継承する主人公、革離（かくり）は、平和を重んじる一方で、教団が内部分裂し権力に迎合しつつある状況を憂いています。彼は小国・梁の城主である梁渓から、趙軍に囲まれた梁城を守る依頼を受けます。この依頼は、教団の指導者である田襄子の命に背くものですが、革離は梁城の防衛に単身乗り込むことを決意します。

工夫を凝らして自らの力を駆使し、部隊をまとめあげ趙軍の大軍と対策する革離は、数々の困難に立ち向かい続けます。彼の奮闘の中で、時折彼を試すように襲いかかる運命の矢が、彼の決意と命運を大きく揺さぶることになります。

主な登場人物

• - 革離（かくり）: 本作の主人公で、墨家において教えに従いながらも、一人で梁城を防衛しようと奮闘します。彼は軍事の専門家としての才能を示しながら、多くの戦いを重ね、壮絶な戦闘を繰り広げます。
• - 薛併（せつへい）: 墨家の一員で政治家として田襄子の側近であり、革離とは対立する立場にあります。
• - 巷淹中（こうえんちゅう）: 趙の名将で、城を攻撃する強力な敵役として描かれます。
• - 梁渓（りょうけい）: 梁城の城主であり、革離との連携を保つ役割を担います。

書誌情報

本作は新潮社から単行本として刊行され、その後文庫版も登場しています。また、関連する漫画も小学館から発行され、異なる時代背景が設定されています。

結語

『墨攻』は、ただの戦いの物語ではなく、信念や理想が葛藤と向き合う姿を描いた作品です。酒見賢一の描く世界は、歴史小説としての重厚さとともに、人間の命の儚さを浮き彫りにする深い内容を有しています。

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