士別森林鉄道

士別森林鉄道

士別森林鉄道は、北海道上川郡朝日町（現在の士別市）の天塩川上流の国有林から木材を搬出するために、昭和初期に朝日営林署によって建設された森林鉄道です。森林経営の効率化を目的として、1930年（昭和5年）に着工し、1932年（昭和7年）11月に開業しました。

路線と構造

開業当初、路線は士別軌道・奥士別駅に隣接する朝日営林署輸送事務所から登和里神社までの7.0kmでした。翌年には登和里神社から新奥士別まで14.0km、1932年（昭和7年）には新奥士別からポンテシオの天塩岳御料地まで9.5kmが敷設され、本線は30.5kmに達しました。路線の規格は、軌条10kgを使用し、幅員は2.7m、平均勾配は10.75パーミル、最急勾配は25.0パーミル、最小半径は30m、道床厚は0.18mでした。また、橋梁は36箇所に設けられ、特に天塩川第三橋梁には35.91mのプレートガーダーが使用されていました。

路線網の拡大と輸送量

1937年（昭和12年）には、本線から分岐して似狭（にさま）線7.0km、咲留（きっくる）線3.7kmが延長され、さらに1939年（昭和14年）にはペンケ沢に10.2kmが敷設され、総延長は51kmに達しました。第二次世界大戦中は伐採量が大幅に増加し、1941年（昭和16年）以降の輸送量は約29,000立方メートルに達しましたが、戦後は約14,500立方メートルを維持していました。1948年（昭和23年）には士別軌道との間で、営林署の運材車が直接乗り入れる通車運転が開始され、その間には軌条の増設や移動も行われました。1953年（昭和28年）には咲留作業軌道3.0kmが森林鉄道に編入され、1954年（昭和29年）には本流奥地域（天塩岳山麓）開発のため、幹線がさらに5.0km延長されました。

廃止

1954年（昭和29年）の洞爺丸台風（15号台風）による風倒木処理期間中は、ペンケ沢の直営伐採事業を中止し、撤去した軌条10kmを天塩川上流域に敷設して輸送力を最大限に活用しましたが、1958年（昭和33年）には「運材に弾力性があり、森林鉄道より維持費の安い自動車道に転換する」という林道経営方針の転換により、1960年（昭和35年）までに全線が自動車道並びに併用林道に転換されました。

現在

廃線跡の大部分は、1970年（昭和45年）に完成した岩尾内ダムによって水没しました。現在は、士別市あさひサンライズホールにミニSLが展示され、往時の情景が再現されています。

路線データ

士別森林鉄道本線：30.5km
ペンケ線：10.2km
似狭線：7.0km
咲留線：3.7km
於鬼頭線：1.5km
軌間：762mm
動力：蒸気・内燃

参考文献

奥山道紀　士別森林鉄道・天塩川を遡った森林鉄道　レイル№101（エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン、2017年）
秋山純広『北海道の森林鉄道史に関する研究』（北海道大学農学部卒業論文、1991年）
宮脇俊三『鉄道廃線跡を歩く9』（JTB出版、2002年）
小熊米雄 『日本の森林鉄道 上巻・蒸気機関車編』（エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン、1989年）
小熊米雄『北海道における森林鉄道用ジーゼル機関車について』（北海道大学農学部演習林研究報告 第20巻第1号、1959年）
旭川営林局史（旭川営林局、1960年）
朝日町史（朝日町史編さん室編　朝日町　1981年）

関連項目

森林鉄道
廃線

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