士別軌道

士別軌道：北海道の地域輸送を担う企業

士別軌道株式会社は、北海道士別市に本社を構え、バス事業を主体とする企業です。その歴史は古く、かつては軌道（軽便鉄道）事業や貨物運送事業も手掛けていましたが、時代の変遷とともに事業形態を変化させてきました。本稿では、士別軌道の歴史、軌道事業、バス事業、そして現在の取り組みについて解説します。

歴史：国有林輸送から地域輸送へ

士別軌道のルーツは、1917年（大正6年）に遡ります。当初は、天塩軌道株式会社として、国有林の資源輸送を目的とした馬車軌道の敷設を出願しました。特に、富士製紙（後の王子製紙）向けの林材輸送に大きく貢献しました。

興味深いのは、奥士別には皇室の御料林が存在し、1939年（昭和14年）には宮内省帝室林野局が同社の株式を取得、皇室財産に組み入れられたことです。戦後、皇室財産が国庫に編入されたため、同社の株式は農林省林野庁へと引き継がれました。そのため、地方のバス会社でありながら、会計検査院の検査対象となるなど、異例の存在でした。

しかし、林業を巡る状況の変化により、1988年（昭和63年）にはトラックによる運材部門が廃止。国が株式を保有する意義が薄れたため、地元自治体への株式売却が検討されましたが、価格交渉は難航しました。最終的に、2001年（平成13年）に国が株式の一部を売却し、会計検査の対象から外れることとなりました。

軌道事業：森林鉄道との連携

かつて士別軌道が運営していた軌道事業は、762mmのナローゲージによる軽便鉄道でした。主に、帝室林野局札幌支局士別出張所、後の旭川営林局朝日営林署管轄の士別森林鉄道との連帯輸送を担い、森林資源を士別駅土場へ運搬する役割を果たしていました。旅客輸送も行っていましたが、末期にはバスとの併用となり、事実上、貨物輸送がメインとなっていました。

1959年（昭和34年）、士別森林鉄道の廃止により貨物輸送が困難になったことから、軌道事業は廃止され、バス・トラック専業へと移行しました。

路線データ（廃止時）

路線距離：21.4km
軌間：762mm
駅数：11駅
複線区間：なし（全線単線）
電化区間：なし（全線非電化）
動力：馬力→蒸気→蒸気・内燃併用→内燃

バス事業：地域に根ざした輸送サービス

軌道事業の廃止後、士別軌道はバス事業に注力してきました。現在では、路線バス、貸切バス、デマンドバスなどを運行し、地域住民の足として重要な役割を担っています。

路線バス

士別市内線は160円均一運賃で、前乗り・前払い方式を採用しています。郊外線は整理券方式の後払いとなります。

デマンド路線

予約制のデマンドバスも運行しており、川西・南沢線、武徳線、北線、川南線などが運行されています。これらの路線は、地域住民の生活を支える重要な交通手段となっています。

貸切バス

観光貸切バスも運行しており、北海道全域での運行が可能です。また、旧朝日町より福祉バスの運行を受託するなど、地域に密着したサービスを提供しています。

客貨混載

2016年9月からは、ヤマト運輸と連携し、朝日線においてバスで宅急便を輸送する「客貨混載」を開始しました。これにより、地域における物流の効率化にも貢献しています。

車両

路線バスには主に日野製、貸切バスには三菱製の車両が使用されています。また、北海道内のバス事業者では唯一、モノコックボディの大型車両が現存しており、2010年からはハイブリッドノンステップバスも導入するなど、新旧の車両が混在した構成となっています。

まとめ

士別軌道は、かつての軌道事業からバス事業へと転換し、地域に根ざした輸送サービスを提供し続けています。森林鉄道との連携や皇室財産の編入など、特異な歴史を持つ同社は、地域輸送を支える重要な存在として、これからもその役割を果たしていくことでしょう。

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