士鞅

士鞅の生涯とその影響力

士鞅（しおう、生没年不詳）は、中国の春秋時代における晋の政治家です。彼の姓は祁、氏は士で、封地から范とも称されます。士匄（范宣子）の三男として生まれた士鞅は、上の兄二人が早世した可能性が高いため、実質的に嫡男の地位を得て政治の世界で頭角を現しました。

初期の経歴と亡命

士鞅は紀元前559年、晋軍が他の同盟国と共に秦に攻め込む際に次卿・中軍の佐として従軍しましたが、決定的な敗北を喫します。この結果、公族大夫である欒鍼とともに殿軍として攻撃を試みましたが、再び逆襲を受け、欒鍼は戦死、士鞅は偶然にも生還しました。兄の欒黶が士鞅を責め立てたため、士鞅はやむを得ず秦に亡命する羽目となります。しかし、秦公の手助けで戻ることができた士鞅は、欒氏に対して深い恨みを抱くことになります。

欒氏との権力争い

紀元前552年、士鞅の姉妹が欒黶の死後に生活に困窮し、息子の欒盈から叱責されます。この機会を逃さず、士鞅は士匄に対して欒盈の謀反を讒言するよう進言しました。この結果、欒盈は追放され、士氏の勢力が拡大します。

紀元前550年、欒盈が晋に攻め込もうとした際、士鞅はその支援者である魏舒を公宮に連れ出し、連携を防いで成功を収めました。士鞅はこの戦役で顕著な成果を挙げます。

晋卿としての地位

士匄の死後、紀元前548年に士鞅は晋の正卿となり、これまでの経験を生かして外交や軍事において活躍しました。しかし、年が経つにつれて彼の行動には自己中心的な面が目立つようになり、他国の使者に対する恫喝や賄賂の要求を行うようになります。紀元前521年には、魯国の使者に対して豪華な饗応を強いるなど、その権威を乱用しました。

失脚とその後

士鞅は紀元前510年、周王室が新たな城壁を築く際に晋を代表して進言し、正卿に昇進します。しかし、進言者としての信用を失うような不手際も相次ぎ、士鞅は魏舒の遺骸を侮辱する行為を行ってしまいます。この出来事が、彼の失脚の引き金となります。

紀元前506年、蔡が楚に攻撃され、自国の支援を求めた際、士鞅は個人的な問題から救援を取りやめたり、さらには他国の使者を抑留する事態を引き起こします。最終的には、彼の子息が他の勢力と対立することで孤立し、士鞅は正卿から失脚しました。

士鞅の失脚と共に、士氏は衰退の一途をたどり、晩年の彼は一族の存続に危機感を抱いていたことでしょう。彼の死後、彼は「献」として諡され、范献子と呼ばれるようになりました。士鞅の名前は、政治の舞台での策略や権謀と共に語り継がれていくことになるのです。

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