夏の感情 (アルバム)

南沙織のアルバム『夏の感情』（なつのかんじょう）は、1974年7月21日にCBS・ソニーから発売された作品です。これは、南沙織が発表した通算3作目にあたるカバーアルバムとして位置づけられています。

アルバムの位置づけと特徴

スタジオ録音盤としては9作目にあたる本作ですが、その内容は自身のシングル曲とB面曲を除けば、ほとんどがカバー楽曲で構成されています。当時のLP帯には、「若者の共感が渦巻く、青春の詩… オリジナルとニューミュージックで綴るヤングのテーマここに結集!」というコピーが掲げられており、青春の情景や若者の心情を描いた楽曲が中心であることが示唆されています。

収録楽曲の構成

アルバムには、11枚目のシングル「バラのかげり」とそのカップリング曲「この街にひとり」、そして12枚目のシングルタイトル曲「夏の感情」と、そのカップリング曲「愛の序曲」といった、有馬三恵子作詞・筒美京平作曲によるオリジナル楽曲が4曲収録されています。これらを除く他の楽曲は全てカバーであり、従来の南沙織のアルバムで多く見られた洋楽ポップスのカバーとは異なり、本作では当時の日本のニューミュージックシーンで活躍していたアーティストたちの楽曲が中心に取り上げられています。

カバーされた主なアーティスト

ザリバ（「或る日」）：矢野顕子の実質的なデビューバンドとして知られるグループの楽曲。
チェリッシュ（「ふたりの急行列車」）
井上陽水（「心もよう」）
吉田拓郎（「結婚しようよ」）
りりィ（「私は泣いています」）
チューリップ（「夏色のおもいで」）：財津和夫作曲。
高木麻早（「ひとりぼっちの部屋」）
小坂明子（「あなた」）

これらの選曲からは、当時のフォークソングやニューミュージックが台頭してきた時代背景がうかがえます。全曲の編曲は矢野誠が手がけていますが、「夏の感情」のみ作曲も手がけた筒美京平が編曲を担当しています。

制作と関連エピソード

アルバムタイトル曲でもある「夏の感情」のレコーディングでは、当時の人気グループであるティン・パン・アレーが伴奏を務めました。また、本作発表前に行われたコンサートツアーにおいても、ティン・パン・アレーがバックバンドを担当し、さらにサポートメンバーとして矢野顕子も参加しています。この時の熱気あふれるコンサートの模様は、実況録音盤『CYNTHIA IN CONCERT』として、本作発売の約1ヶ月半後となる同年9月1日にLPレコードとして発売されており、アルバムとライブの両面から当時の南沙織の音楽活動を知ることができます。

ジャケット写真

アルバムのジャケット写真は、南国の美しい風景で知られるロタ島で撮影されました。アルバムタイトルや収録曲の雰囲気にも合う、爽やかで開放的なイメージのビジュアルとなっています。

現在の入手状況

本作は、LPレコードとして初めてリリースされて以降、1997年にはCD選書として、2006年には紙ジャケット仕様の高音質マスターサウンド盤としてCD化されています。しかし、現在ではCDパッケージでの生産は中止されているものが多いようです（2012年時点の情報）。それでも、多くの音楽配信サービスでデジタル形式での購入やストリーミングが可能となっており、現代でも気軽に聴くことができます。

アルバムの意義

『夏の感情』は、単なるヒット曲のカバー集にとどまらず、当時の日本の音楽シーンで影響力を持ち始めていたニューミュージックに積極的にアプローチした作品と言えます。実力派ミュージシャンの参加も相まって、南沙織の新たな音楽性を提示したアルバムとして、その後の活動にも繋がる重要な位置を占めています。

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