夏侯楙

夏侯楙に関する詳説

夏侯楙（かこう ぼう、生没年不詳）は、中国の三国時代に活躍した武将であり政治家です。彼の字は子林であり、父は著名な武将夏侯惇、兄は夏侯充、また弟には夏侯子臧や夏侯子江などがいます。妻は曹操の娘であり、清河長公主であったことも特筆すべき点です。彼の生涯については、正史『三国志』の魏志「諸夏侯曹伝」に記録されています。

生涯の概要

夏侯楙の父は曹操の時代からの功臣であり、その影響力により清河長公主との結婚が許されました。これによって、彼は重用されることになりましたが、父の爵位を受け継いだのは兄であり、夏侯楙は父の生前からすでに別の爵位を得ていました。魏が建国された後、彼は侍中、尚書、安西将軍、そして鎮東将軍といった様々な重要な職業を歴任しました。

219年、彼の従兄弟である夏侯淵が戦にて戦死した際、夏侯楙はその後任として長安付近に駐屯することになりました。220年、曹丕（魏の文帝）が禅譲して即位すると、安西将軍及び持節に任命され、関中の軍勢を指揮することが求められました。

しかし、夏侯楙は生まれつき戦略や武力に欠けており、金銭に対する関心が非常に高かったとされています。228年、蜀漢の諸葛亮が北伐を行った際、魏延は夏侯楙の臆病さを耳にして、彼に代わり長安を急襲することを提案したものの、受け入れられなかったと言われています。その後、曹叡（明帝）が蜀に備えるために西方へ遠征する際、夏侯楙の性格が問題視され、洛陽に呼び戻されて尚書に任命されることとなりました。

私生活の乱れと波乱

夏侯楙は関中にいた時期に多くの娼妓を囲っていたため、妻との関係が悪化していきました。彼は弟たちの行動が礼を欠いていると叱責したものの、弟たちは夏侯楙の行いを隠し、彼の妻に対して嘘の罪状を申し立てました。その結果、夏侯楙は逮捕されることになります。曹叡が彼を処刑しようとすると、段黙が彼の冤罪を主張し、その弁護によって命を救われました。

演義における描写

小説『三国志演義』においては、夏侯楙は正史とは異なる設定で描かれています。彼の字は子休とされ、夏侯淵の子で夏侯惇の養子という立場で、無能で暗愚な武将としての役割が強調されています。金銭欲が強く、能力がないために敵方から利用される状況も描かれています。彼は蜀の武将である趙雲や魏延からも「臆病で策がない男」と酷評されるほどでした。

諸葛亮の北伐が始まった時、夏侯楙は自ら進んで総大将となり、諸将を率いて諸葛亮に立ち向かいますが、あっさりと手玉に取られ、最終的には捕虜となりました。

夏侯楙の物語は、彼の性格や行動が引き起こした波乱に満ちた人生を象徴しています。最後には馬遵と共に羌族の土地へ逃げ、その後魏には戻らず、その影響を残すこととなったのです。

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