夏堀悌二郎

夏堀悌二郎（なつぼりていじろう）は、明治28年（1895年）4月29日に生まれ、昭和42年（1967年）12月2日に亡くなった日本の政治家です。特に、青森県八戸市において、戦後混乱期に市政を担った第6代および第7代の市長としてその名を知られています。

若年期と経歴

夏堀悌二郎は、青森県三戸郡地引村（現在の南部町）の出身です。東京帝国大学法科大学独法科で法律を学び、卒業後、大正9年（1920年）には判事として任官しました。前橋、東京、釧路の各地方裁判所で勤務した後、小樽地方裁判所の判事を務めました。退官後、小樽市で弁護士として開業し、昭和3年（1928年）から昭和11年（1936年）にかけて、北海道会議員を2期にわたり務めました。

昭和18年（1943年）、夏堀源三郎氏からの要請に応じ、故郷の八戸に戻り、弁護士業務を再開します。

八戸市長就任

終戦後の昭和21年（1946年）、当時の八戸市長であった山内亮氏が辞任したことを受け、次期市長選出の動きが起こります。当時の市議会議長であった鈴木惣吉氏は、戦後の社会情勢を鑑み、市議会での選出は現実的ではないとし、「世論を尊重した公選」による市長選出を提案しました。この提案は全議員の賛同を得て、八戸市における初の公選市長選挙が実施される運びとなります。

この選挙は、まだ公職選挙法が施行されておらず、公選という制度自体も普及していない時期に行われました。そのため、選挙の実施方法については市議会で協議の上、以下のような独特の方式が取られました。

選挙管理は、市議会議員全員と各町内会会長で構成される「市長公選委員会」が担い、市議会議長が委員長、副議長が副委員長を務めました。
選挙人名簿には、大正15年（1926年）5月31日までに出生したすべての男女が登録されました。この名簿は、5月20日現在の市政台帳を基に、6月5日までに各町内会が作成しました。
投票方法は単記無記名で行われ、不在者投票は認められませんでした。
当選者として市議会に推薦されるためには、有効投票数の3分の2以上を獲得する必要がありました。

このような方法で実施された選挙の結果、投票総数28,184票（無効票627票を含む）が集まり、投票率は68.3%を記録しました。この選挙で夏堀悌二郎が市長に選出され、同年7月20日に正式に就任しました。

翌昭和22年（1947年）には、日本国憲法施行後初の公選選挙が行われ、前回と同じ顔ぶれの中で夏堀は再選を果たし、引き続き市政を担いました。しかし、昭和26年（1951年）の市長選挙では、自由党から擁立された夏堀に対し、民主党と社会党が共闘して外交官出身の村井倉松氏を擁立しました。この選挙で夏堀は村井氏に敗れ、同年4月4日に市長を退任しました。

主な政策と功績

夏堀市政における特に重要な取り組みとして、以下の点が挙げられます。

沈船防波堤の造成: 八戸港の機能向上を目指し、約1億7000万円の費用を投じて、国内初の沈船防波堤が建設されました。造成には、GHQから破棄が指示されていた「富島丸」「大杉丸」「東条丸」の3隻が活用されました。この防波堤は、昭和42年（1967年）に撤去されるまで、港の安全に貢献しました。
水道建設: 市民生活に不可欠な水道インフラの整備に取り組みました。資金調達のために「愛市公債」を発行し、事業の一部を公共事業として進める一方、残りの部分は市民が期成同盟会を組織して分担するという、市民参加型の方法で事業を推進しました。
* 北奥羽経済建設協議会の設立: 昭和24年（1949年）、「行政区画にとらわれない経済の振興、資源の開発、産業の発展」を掲げ、北奥羽経済建設協議会を設立しました。県境を越えた広域的な経済連携を提唱したこの取り組みは、当時としては非常に画期的な試みであり、八戸市長として夏堀自身が会長に就任し、その推進に尽力しました。

これらの政策は、戦後間もない困難な時期において、八戸市の復興と将来の発展に向けた基盤を築く上で重要な役割を果たしました。

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