山内亮

山内亮：戦火から市民を守った八戸市長

山内亮（やまうち りょう）は、1886年12月20日に生まれ、1960年7月26日に没した、日本の政治家です。彼は青森県八戸市の5代目市長であり、特に終戦直前の1945年8月、米軍による空襲の予告を受けて全市民に総退去を命じたことで知られています。この決断は、多くの市民の命を救ったとして、今も語り継がれています。

生涯と政治活動

山内亮は、1886年に三戸郡是川村（現在の八戸市大字是川）に生まれました。彼は1913年に上長苗代村会議員となり、その後、上長苗代村長を務めました。1930年には衆議院議員に選出され、国政にも進出しました。

1942年10月1日、山内亮は八戸市長に就任します。しかし、1946年には自宅での大量の食料・兵器隠匿が発覚し、その責任を取って市長を辞任しました。また、大政翼賛会に関わっていたため、公職追放の処分も受けています。

公職追放解除後、山内亮は再び地域社会で活躍します。1952年には青森県購買農協組合連合会長、1955年にはJA青森中央会会長、南部鉄道社長などを歴任しました。

戦争末期の総退去命令

山内亮の市長時代、八戸市は戦争の脅威にさらされていました。1945年7月14日には、青函連絡船を撃沈したハルゼー機動部隊による空襲を受け、日東化学工業や尻内駅が被害を受けました。さらに8月5日にはB29爆撃機が飛来し、八戸空襲を予告。8月9日には、ハルゼー機動部隊によって八戸港にいた海防艦・稲木が撃沈されました。

こうした状況を受け、山内亮は空襲や艦砲射撃による攻撃を避けるため、8月10日に八戸市中心市街地からの総退去命令を決断しました。この命令により、多くの市民が市外へ避難し、結果として空襲による被害を最小限に食い止めることができました。

終戦時には、ハルゼー機動部隊は三陸海岸沖に撤退しており、市街地は閑散とした状況でした。しかし、山内亮の決断がなければ、八戸市は壊滅的な被害を受けていた可能性もあります。

その他の業績

山内亮は、戦時下においても八戸市の発展に尽力しました。1943年には、戦時下の国や県の強い意向により、市営自動車（現在の八戸市営バス）を五戸鉄道（現在の南部バス）に統合させました。ただし、1948年には市営バス事業は再発足しています。また、1944年には八戸市立工業学校（現在の青森県立八戸工業高等学校）を設立しました。

関連人物

山内亮の親族にも、政治家や実業家が多くいます。叔父には衆議院議員を務めた奈須川光宝がおり、孫には青森県議会議員の山内正孝、曾孫には牧場経営者の山内卓がいます。

まとめ

山内亮は、八戸市長として、戦火から市民を守るために大胆な決断を下しました。彼のリーダーシップと勇気は、八戸市民の記憶に深く刻まれています。また、戦後の復興や地域社会の発展にも貢献し、その功績は多岐にわたります。


参考文献
「写真で見る八戸の歴史　太平洋戦争」1973年、社会経済史研究会
「八戸市議会史　記述編　下」1979年、八戸市

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