龍造寺長信

龍造寺長信

龍造寺長信（りゅうぞうじ ながのぶ）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将です。龍造寺氏、そして後に鍋島氏の家臣として活躍しました。その生涯は、戦国時代の激動の中で、龍造寺氏の勢力拡大に大きく貢献したことで知られています。

生涯

長信は天文7年（1538年）に、龍造寺周家の三男として誕生しました。初期の記録として、永禄元年（1558年）に龍造寺氏が小田政光を滅ぼした際、小田氏の居城であった蓮池城を接収したことが挙げられます。しかし、長信は後に政光の遺児・鎮光を赦免し、城主として迎え入れています。この行動からは、長信の柔軟な姿勢が伺えます。

龍造寺氏は、永禄2年（1559年）に少弐冬尚を滅ぼし、少弐氏を滅亡させましたが、冬尚の弟・政興は再興を目指し反乱を起こします。永禄6年（1563年）には、長信は政興に協調した多久宗利を打ち破り、多久氏の居城であった梶峰城を奪い、自らが城主となりました。

永禄11年（1568年）、長信は梶峰城を鎮光に譲り、自身は小田氏の居城であった蓮池城を居城とします。鎮光とは友好関係を築くため、妹を娶っていましたが、豊後国の大友氏の圧力が強まると、鎮光は大友氏に寝返り、梶峰城から追放されてしまいます。再び長信が梶峰城の城主となりました。その後、肥後（武雄）後藤氏の後藤貴明が梶峰城を攻め取ろうとしますが、長信はこれを退けています。

長信は、大江神大神宮の再興や聖光寺、岩松軒寺の建立など、伝統的な宗教勢力との関係を良好に保ち、領内の安定化を図りました。近年、梶峰城跡から発掘された遺構は、長信が城主を務めていた時代のものであると推測されています。

龍造寺氏の領国において、長信は軍事物資の調達を担っており、特に軍事活動における木材調達に重要な役割を果たしました。長信の本拠地である多久が材木供給地に近いという地理的な利点と、木材調達や普請に関わる職人集団を擁していたことが、この役割を担う上で有利に働きました。龍造寺隆信は、肥前西部への進攻に際して、長信のこうした能力を積極的に活用しました。これにより龍造寺氏は、城郭の普請を盛んに行い、肥前国内における勢力基盤を築くことに成功しました。

また、長信は龍造寺氏が西肥前へ進攻する際に、武雄温泉の利用に関わり、境界の防備にも従事していたことが知られています。

龍造寺氏の領国の実権が鍋島氏に移った後の、龍造寺隆信の孫・高房との対立においては、長信は龍造寺信周、龍造寺家晴とともに上京し、幕府の裁定を受け入れ、鍋島氏への権力移譲を容認しました。

長信の嫡男である安順は、初代多久領主となり、後多久氏の祖となりました。

系譜

父：龍造寺周家（1504-1545）
母：慶誾尼（1509-1600）? - 龍造寺胤和娘
室：小田政光娘
嫡男：多久安順（1566/63-1641）
生母不明の子女
女子：後藤家忠室
女子：真光院 - 鍋島茂賢正室

脚注

参考文献

鈴木敦子『龍造寺氏領国における物資輸送と長信の役割』同成社、2011年。
中村知裕「中世九州の温泉と権力・交通」『七隈史学』9号､2008年。
中村知裕「龍造寺氏の軍事活動と山林資源の調達」『七隈史学』12号、2010年。
* 中村知裕「龍造寺氏の肥前西部侵攻と龍造寺長信」『古文書研究』83号、2017年。

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