多摩川スピードウェイ

多摩川スピードウェイの歴史

多摩川スピードウェイ（たまがわスピードウェイ）は、神奈川県川崎市中原区の多摩川河川敷に位置していた、日本及びアジア初の常設サーキットです。1936年5月9日に開業し、通称「オリンピアスピードウェイ」とも呼ばれました。このサーキットの開場は、日本における自動車レースの歴史において重要な役割を果たしました。

開場までの背景

自動車レースは1910年代から日本でも行われており、特に富裕層や外国人による輸入車を使った大会が人気でした。しかし、1920年代には国産自動車メーカーも出現しましたが、開催場所の確保が難しかったのです。特に、日本にはパーマネント（常設）サーキットが存在せず、目黒競馬場やその他の場所での開催が行われていました。

この状況を改善するために、アメリカでモータースポーツを経験した藤本軍次が新たなサーキットの設立を提案し、1930年代初頭に報知新聞社と共に「日本スピードウェイ協会」を設立。サーキット用地の確保に向けて奔走しました。

開業と初期の大会

その結果、東京横浜電鉄からオリンピア球場跡地が提供され、1936年には建設資金も調達されて、ようやく多摩川スピードウェイが完成しました。一周1,200メートル、幅20メートルのダートオーバルトラックを特徴とし、メインスタンドは多摩川の堤防に位置していました。スタンドの収容人数は数千人で、サーキット全体では3万人を収容可能でした。

開業直後の同年6月7日には、日本初の本格的な自動車レースとして「第1回全国自動車競走大会」が開催。多くの観客を集め、日産自動車やオオタ自動車工業などが参加しました。特に、この大会には本田技研工業の創設者である本田宗一郎も参戦し、有名なレースとなりました。

レースの盛況とその後

続く大会も順調に実施され、第2回大会では外国車も多く参加し、観客数も増加。これにより多摩川スピードウェイは自動車レースの中心地としての地位を確立しました。しかし、日中戦争の影響により、レースは徐々に減少し、第4回大会を最後に自動車レースは停止。戦争の影響で日本国内のレース活動は制限されました。

戦後の状況

第二次世界大戦後、多摩川スピードウェイは一時的にオートレース場として再利用される計画がありましたが、結局実現には至りませんでした。公営競技場の建設計画は水害のリスクと地域住民からの騒音問題による懸念もあり、整備されることはありませんでした。最終的には1950年代の初頭には施設が廃止され、1952年には野球場に転用されました。

現在の跡地

多摩川スピードウェイの跡地には、日本ハム球団の多摩川グラウンドが造成されましたが、かつてのメインスタンドの遺構が今年まで残っていました。メインスタンドの跡地は2021年に工事が始まり、多くが取り壊されることになりましたが、記念プレートの一部は移設され、現在も残されています。協力者たちの努力により、遺構が保存されることを願う声が上がり続けています。

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