多摩川低地

多摩川低地の概要

多摩川低地は、関東平野の南部に位置し、主に東京都と神奈川県にまたがる多摩川沿いに細長く広がる沖積低地です。西は東京都青梅市から東は東京湾にまで至り、北は武蔵野台地、南は多摩丘陵と接しています。この低地は、多摩川の堆積作用によって形成された、特有の地形と地質を持っています。

地形と地質の形成

多摩川低地は、最終氷期以降の海水準の上昇に伴い、多摩川が運搬した土砂が堆積することで形成されました。地質は主に砂、シルト、粘土からなる沖積層で構成されており、これらの堆積物は多摩川やその支流によって運ばれてきました。多摩川低地は、地形の特徴から以下の3つの区分に分けられます。

1. 上流部（溝口以西）:
扇状地性の平野であり、厚さ数メートルから十数メートルの砂礫層によって構成されています。稲城市矢野口付近では、表層地質が19メートルの砂利層となっています。地形は、網状の河川跡である旧河道と、その間に存在する島状の微高地から成り立っています。微高地は、一般の砂礫層の上にシルトや細砂層が堆積しており、一般面よりも厚い砂礫層が見られます。特に川崎市登戸より上流では、旧河道と微高地の分布が顕著です。

2. 中流部（溝口-鹿島田）:
この地域では、旧河道と砂礫堆（自然堤防）による微高地の地形が徐々に不明瞭になります。溝口から下流にかけては、自然堤防と氾濫平野（後背低地）が交互に配置された地形となります。この地形は主に多摩川の右岸に広がっており、左岸側では二子玉川、玉堤、鵜の木、下丸子付近に見られる程度です。大正時代の河川改修以前、多摩川は大きく蛇行していましたが、その痕跡は川崎市の下野毛、等々力、向河原、上平間付近に埋立地として残っています。しかし、都市化による盛土などでその区域は不明瞭になりつつあります。

3. 下流部（鹿島田以東）:
鹿島田を中心とした半径約8キロメートルの円弧状の三角州地域です。一般的に、谷底平野や氾濫平野から三角州平野への移行は明確ではありませんが、多摩川低地も例外ではありません。下丸子、鹿島田、日吉を結ぶ線を境に、旧河道の形状や微高地の配置が変化します。現河道に直交または斜行し、かつての汀線に沿って形成されたと考えられる浜堤や沿岸州に由来する微高地が分布しており、標高は両岸ともに5メートル以下となっています。

まとめ

多摩川低地は、多摩川の堆積作用によって形成された、複雑な地形と地質を持つ地域です。上流、中流、下流で異なる地形の特徴を持ち、それぞれが独自の形成過程と歴史を物語っています。この地域は、多摩川の恵みによって形成され、人々の生活と密接に結びついてきました。

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* 東京都地質調査業協会 技術ノート No.38 特集：多摩川

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