多治比広足

多治比広足の生涯と官歴

多治比広足（たじひ の ひろたり）は、奈良時代に活躍した公卿であり、左大臣・多治比嶋の六男として生を受けました。本記事では、彼の経歴や官歴を詳しく掘り下げ、奈良時代の政治的背景と彼の人物像を考察します。

早い叙爵から地方官の歴任へ

霊亀2年（716年）、広足は従五位下に叙爵されて公務に従事し始めます。この初期のポジションでの活動を通じて、彼は政治的な地位を築くための第一歩を踏み出しました。養老5年（721年）には従五位上へ昇進し、同年9月には造宮大輔の職に任命されました。その後も神亀3年（726年）には正五位下に昇るなど、順調に昇進を続けました。

広足は地方官としても重要な役割を果たします。天平5年（733年）には上総守、続く天平10年（738年）には武蔵守に任命され、この時期に地方行政の遂行に携わることでその実績を積み上げました。

兄の死と氏族の長としての地位

天平11年（739年）、広足の兄である中納言・広成が亡くなると、彼はその後を受けて多治比家の長となります。この頃、彼の昇進はますます加速し、天平12年（740年）には正五位上、さらに天平15年（743年）には従四位下、そして天平19年（747年）には従四位上にまで至ります。

このような昇進は、当時の政権である橘諸兄政権の影響を受けてのものであり、天平20年（748年）には正四位下や参議に叙任されるなど、公卿としての地位を確立しました。

実力者としての活動とその後の苦難

広足は、西暦749年に孝謙天皇が即位すると、これに伴い正四位上・中納言に昇進し、翌年には従三位への昇叙も果たします。また、天平勝宝年間末には、左大臣・藤原豊成と紫微内相・藤原仲麻呂に次ぐ太政官内での地位に上り詰めました。これらの功績は彼の政治的資質や能力を証明しています。しかし、その後の運命は波乱に満ちたものでした。

天平宝字元年（757年）に発生した橘奈良麻呂の乱では、彼の一族から多数の処罰者が出たことが問題視されます。これにより公卿としての適格性を問われ、中納言の職を辞任せざるを得なくなりました。以降、広足は出仕せず、邸宅に籠もる日々を送ったとされています。

最後の時と遺産

天平宝字4年（760年）1月21日、広足は80歳で生涯を閉じました。彼の最終的な官位は散位従三位でしたが、その豊富な経験と知識は後の世に多大な影響を与えました。

彼の生涯は、奈良時代の政治における公卿の重要性を示しており、貴族の家系とその運命の変遷を裏付ける一例として、多くの歴史的資料に取り上げられています。多治比広足の存在は、当時の政治的ダイナミクスを理解するために欠かせないものと言えるでしょう。

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