多発外傷

多発外傷とは

多発外傷とは、身体の複数部位に同時に重度の外傷を負った状態を指します。具体的には、頭部、胸部、腹部、骨盤、四肢など、2か所以上の部位に生命を脅かすような損傷がある場合をいいます。重症外傷患者の多くが多発外傷を合併しており、その死亡率は高いことが知られています。

多発外傷患者の死亡率は約28％と報告されており、主な死因は頭部外傷、出血性ショック、多臓器不全です。特に、受傷後24時間以内の死亡が全体の約8割を占めており、迅速かつ適切な対応が求められます。

診断と治療の優先順位

多発外傷は、複数の臓器が損傷を受けているため、病態が急速に悪化する可能性があります。そのため、診断に時間をかけるよりも、救命に必要な治療を優先することが重要です。

救急外来では、まずバイタルサイン（呼吸、心拍、血圧など）を確認し、生命維持に重要な臓器の損傷を迅速に検索します。CT検査や超音波検査などの全身精査を行い、損傷部位と重症度を把握します。

一般的に、治療の優先順位は胸部、頭部、腹部、骨盤・四肢の順とされていますが、患者の状態によって異なります。損傷部位、重症度、緊急度を総合的に評価し、個々の患者に合わせた治療計画を立てる必要があります。

緊急処置

多発外傷における緊急処置は、以下のものが基本となります。

気道確保: 気管挿管を行い、人工呼吸器による呼吸管理を行います。
心嚢穿刺: 心タンポナーデを起こしている場合、心嚢に溜まった血液を抜きます。
胸腔穿刺: 気胸や血胸を起こしている場合、胸腔に溜まった空気や血液を抜きます。
静脈路確保: 輸液や輸血を行うための血管確保を行います。

集学的治療

多発外傷の治療は、救急科、整形外科、脳神経外科、消化器外科、麻酔科など、様々な診療科の専門家が連携して行う集学的治療が不可欠です。各専門家がそれぞれの専門性を活かし、患者の状態に合わせて最適な治療を提供することで、救命率の向上を目指します。


参考文献
* 上野雅民監修 『救急医療ハンドブック』日本情報出版株式会社、2004年

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