多邇具久

多邇具久（たにぐく）について

多邇具久は、日本神話において特異な存在として登場する神で、その名はヒキガエルを指す言葉としても知られています。特に、大国主が国を築く際に登場し、その物語に深く関与しています。

物語の詳細

『古事記』によれば、大国主が出雲の御大岬にいたとき、海の向こうから小さな神が現れました。多くの者はその神の名を知りませんでしたが、多邇具久が登場し、かかしの久延毘古にその名を尋ねることを提案しました。久延毘古によって明かされたその神の名は「神産巣日神の子の少彦名神」であるとされ、多邇具久の存在がこの神話の重要性を示しています。このエピソードは『日本書紀』には見られないものの、谷川健一は他の地域の伝承を通じてその影響を探ります。

ヒキガエルの象徴

多邇具久はヒキガエルとの関連でも知られており、この生物は地上のほとんどの場所に生息していることから「国土の隅々まで知り尽くした存在」と見なされていました。『万葉集』の詩においても、ヒキガエルは地上をはう支配者として描かれています。具体的には、山上憶良の歌にある「天雲の向伏極み 谷蟆のさ渡る極み」という表現は、天皇が支配する領域をヒキガエルにたとえることで、国づくりの重要性を反映しています。

語源と方言

多邇具久という名の語源は「谷潜り」に関連しているとされ、「クク」はヒキガエルの鳴き声を表す擬音語であるとも考えられています。また、熊本県や和歌山県では異なる方言でヒキガエルが呼ばれており、これらは多邇具久の転訛の一例とも言われています。専門家の中には、多邇具久が傀儡子に関連があるのではないかとの意見もあります。

地域の信仰

多邇具久の信仰は各地に広がっており、島根県松江市には美保神社があり、そこで彼が祀られています。また、和歌山県の淡嶋神社には多邇具久命が奉納される風習も存在しています。さらに、三重県の二見興玉神社では猿田彦大神が信仰され、その神使としてカエルが位置づけられています。

結論

多邇具久は日本の神話において非常に象徴的な神であり、国づくりや信仰の中で重要な地位を持っています。地域ごとに異なる伝承や信仰の形が見られ、ヒキガエルという生物を通じて、日本の自然観や神々の存在がいかに深く結びついているかを物語っています。

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