夜明けのうた

夜明けのうた：昭和歌謡史に輝く不朽の名曲

1964年、岸洋子によって発表された「夜明けのうた」は、彼女の代表曲として広く知られています。この楽曲は、第6回日本レコード大賞において、岸洋子が歌唱賞、作詞家の岩谷時子が作詩賞を受賞するなど、その高い評価を裏付ける輝かしい実績を誇ります。1965年5月時点での売上枚数は64万枚に達し、その人気ぶりは当時を反映した数字として今なお注目を集めています。

「夜明けのうた」のヒットは、岸洋子のキャリアに大きな転機をもたらしました。この楽曲で1964年の第15回NHK紅白歌合戦に初出場を果たし、1969年の第20回紅白歌合戦でも再びこの曲を歌唱しています。それまでの岸洋子はシャンソンなどを中心に歌っていましたが、コンサートへの出演を機に日本の歌への需要が高まり、急遽「夜明けのうた」が用意された経緯があります。

しかし「夜明けのうた」は、岸洋子だけのオリジナル作品ではありませんでした。元々は、1963年に日本テレビ系列で放送された坂本九主演の連続ドラマ『ぼうや』の主題歌として、坂本九が歌い、1964年10月には坂本のシングル「夜明けの唄」（表記に違いあり）として発売されていました。

坂本九バージョンは働く少年を励ます力強い歌でしたが、岸洋子は「僕」を「あたし」に置き換えることで、勤労少年賛歌を恋愛を歌った格調高いラブソングへと変貌させました。その結果、岸洋子バージョンが大きなヒットを記録し、現在では一般的に岸洋子の代表曲として認識されています。

「夜明けのうた」は、音楽性だけでなく、映画の世界にもその足跡を残しています。1965年には、岸洋子歌唱による主題歌をフィーチャーした同名映画が、浅丘ルリ子主演で日活より公開されました。モノクロ、日活スコープ、97分というフォーマットで制作され、2010年にはDVDも発売されています。

この映画版では、いずみたくが音楽を担当し、山田信夫が脚本、蔵原惟繕が監督を務めました。浅丘ルリ子をはじめ、浜田光夫、松原智恵子、岡田真澄など、錚々たる俳優陣が出演しています。

楽曲の制作陣も豪華です。作詞は岩谷時子、作曲・編曲はいずみたくと、昭和歌謡界を代表する才能が集結しました。岸洋子盤のカップリング曲「スウェーデンの城」は、あらかはひろし作詞、レイモン・ル・セネシャル作曲、若松正司編曲と、こちらも豪華な顔ぶれです。坂本九盤には「もし好きになったら」も収録されています。

そして「夜明けのうた」は、多くの歌手によってカバーされ続けています。石原裕次郎、川田正子、小林旭、小林幸子、佐良直美、芹洋子、東京事変、本田美奈子．、和田アキ子feat.一青窈、大月みやこ、新垣勉、佐々木秀実、鮫島有美子、由紀さおり、遊佐未森、Dionne Warwick、sugar me、美川憲一、フランク永井など、ジャンルを超えた幅広いアーティストが、この曲をそれぞれの解釈で歌い上げています。 由紀さおりはTBSと毎日放送で放送されていたラジオ番組『明日の農業・歌謡曲でおはよう』のテーマソングとして使用していました。さらに、岸洋子の出身地である山形県酒田市の酒田駅では、かつて接近メロディーとして使用されていたこともありました。

「夜明けのうた」は、単なる一曲のヒットにとどまらず、昭和歌謡史に輝く不朽の名曲として、そして時代を超えて愛される普遍的な魅力を持つ楽曲として、これからも人々の心を捉え続けることでしょう。

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