夢想賢心流

夢想賢心流について

夢想賢心流（むそうけんしんりゅう）は、肥前国多久において創始された総合武術の流派であり、その核心は捕手術にあります。この流派は、流祖である大山賢心によって作られ、彼が聖光寺内の黒髪権現社に籠もり、身を清め、祈りと修行を重ねる中で編み出されました。この流派が初めて弟子に伝授されたのは、1686年の貞享三年であり、特に嶋田彌五兵衛が二代目として受け継ぎました。創始の年についての明確な記録は残っていませんが、貞享三年よりも前に始まったと考えられています。

歴史的背景

夢想賢心流は、主に捕手術に従事していた者たちに学ばれていました。捕手術は、国境の警備や捕物の際に用いられ、明治時代に多くの流派が絶えていく中で、夢想賢心流はその伝統を守り続けました。

流派の特徴として、50年ごとに行われる「仕上げ式」という厳かな儀式があります。この儀式は、一週間にわたる合宿によって行われ、参加者は肉食を禁じ、女人を近づけず修行に励みます。最終日には、朝六時に一斉起床し、清流で身を清めた後、黒髪権現に参拝を行い、道場に戻って祭壇に祈願します。祭壇には摩利支天や不動明王、役小角が祀られ、注連縄や燈明で飾られます。残念ながら、1932年に行われた仕上げ式を最後に、この伝統は途絶えてしまいました。

技の内容

夢想賢心流は、複数の技が体系的に存在しており、主に以下の内容が含まれています：

• - 抜刀術：技の一連の流れを学ぶことができ、真胴や三人詰、間忍打など、さまざまな形が存在します。
• - 捕縛術：向捕、三角捕、後捕といった捕客の技法があり、罪人を拘束する際に活用されました。
• - 剣術：上段、下段など、剣の構え方や技の運用方法が体系的に学ばれます。
• - 棒術：差合いや腰車など、棒を使った技術も多岐にわたります。
• - 捕縄術：縄の使用方法についても口伝されており、特に捕獲のための技術が重要視されました。

系譜と流派のつながり

夢想賢心流の歴代師家元には、山田深右衛門や笹川忠太、志久勘兵衛などが名を連ねています。流派の歴史は大山賢心から始まり、二代目の嶋田彌五兵衛以降も多くの師がその伝統を支えてきました。技の名称や流派の教えは、時代や系統に応じて多少の変化が見受けられますが、基本の理念は一貫しています。

このように、夢想賢心流は日本の武道の中で独自の位置を占め、時代を超えた技術の伝承を重視してきました。武術としての技術に加え、精神的な修行の側面も重んじられ、多くの武道家に影響を与える流派として今なお息づいています。

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