大久保ダム (長野県)

大久保ダムの概要

大久保ダム（おおくぼダム）は、長野県駒ヶ根市と上伊那郡宮田村の境に位置し、天竜川水系に建設された重要なインフラです。このダムは高さ3.488メートルの重力式コンクリートダムであり、通称は大久保えん堤とも呼ばれています。中部電力が運営している発電用ダムとして機能し、最大で1,500キロワットの電力を生成しており、その電力は大久保発電所に送水されます。

歴史的背景

大久保ダムの建設は、1926年（大正15年）の初頭にさかのぼり、天竜川電力という企業が設立されました。この企業は、第一次世界大戦後の電力不足を背景に、川の水資源を活用した水力発電所の建設を目指しました。同社は天竜川本流に9つの水力発電所を建設する計画を立て、まず最上流の大久保発電所の工事が1926年11月に開始され、1927年9月に完了しました。その後、経営は矢作水力や日本発送電を経て中部電力が継承し、1966年には無人化が実現しました。

当初はダムの位置が現在の場所よりも下流に計画されていましたが、地域住民への配慮から変更され、出力規模もシュリンクしました。大久保ダムの洪水吐には3つのローリングゲートが設置されており、ゲートの設計は当時の技術を反映しています。これらは急激な増水時でも容易には壊れない仕様となっています。

技術的な詳細

発電に使用される水車は特異なデザインを持ち、電業社原動機製作所による横軸4輪単流露出双子フランシス水車が採用されています。これらは合計27メートルの長さを持ち、当初は全ての水車を同時に稼働させていましたが、効率向上のために後に2輪運転に切り替えられるようになりました。1980年にはこの運転方式が自動化され、運用が円滑になりました。

発電機には芝浦製作所製の三相交流同期発電機が用いられ、直接水車に接続されています。発電所の運用にはいくつかの課題もあり、1945年や1956年には主軸が折れるトラブルが発生しましたが、1997年に水車発電機を一新することで、大幅な性能向上が図られました。ゆえに、発電機は小型化され、コストも削減されました。

周辺環境と観光

大久保ダムは、伊那峡と呼ばれる美しい風景エリアに位置し、遊歩道も整備されています。また、吊り橋の北の城橋からは壮麗な伊那峡の景色を一望できます。奇岩と老松が織りなす自然の美しさは多くの観光客を惹きつけています。

重要な問題

2002年10月16日にはダムの洪水吐が誤作動を起こし、一時的に多量の水が放流される事態が発生しました。適切な管理が行われていたものの、放流量が急増し、約9,000立方メートルの水がダムから流出しました。この異常はコンピュータの操作ミスが原因であると特定され、その後、再発防止対策が進められました。

大久保ダムは、長い歴史と先進技術が結集した重要なインフラであり、地域の発展や観光資源としても価値があります。

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