大久保偵次

大久保偵次

大久保偵次（おおくぼ ていじ、1883年6月15日 - 1973年2月10日）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の大蔵官僚です。彼は銀行局長時代に帝人事件の被告となりましたが、最終的には無罪判決を受けています。また、関場家の養子となっていた時期があり、前半生では関場偵次と名乗っていました。

生涯

大久保偵次は鹿児島県に生まれました。長兄が屯田兵として北海道琴似村に移住した関係で、自身も北海道に移り住み、17歳で関場不二彦の養子となります。札幌中学、第一高等学校を経て、東京帝国大学法科大学を卒業。文官高等試験に合格し、大蔵省に入省しました。同期には、首席で入省した後藤文夫や石黒忠篤などがいます。

官僚としてのキャリアは大蔵属から始まりました。その後、大蔵省事務官、同書記官を歴任し、フランス、イギリス各駐剳財務官代理、国際連盟総会随員として海外にも赴任。第一次世界大戦終結後のドイツによる対日賠償問題にも関わりました。帰国後は銀行局検査課長、日本銀行と横浜正金銀行の検査官を経て、1930年（昭和5年）3月には銀行局長に就任しています。

しかし、1934年（昭和9年）に帝人事件に関与したとして収賄罪に問われ、休職処分となります。この裁判では、被告となった16名全員が無罪となる異例の判決が下されました。当時、東京帝国大学の同期生であった穂積重遠は、101名の有志を代表して大久保の弁護に尽力しています。その後、大久保は北支那開発理事、同社経理部長、金属回収統制会社社長などを務めました。

戦後、大久保は公職追放の対象となりましたが、故郷である鹿児島の後進育成に力を注ぎました。1905年（明治38年）には、土居通次（のち徳島県知事）と共に北海道学生会を創設しています。この学生会は1933年（昭和8年）に財団法人北海道在京学生後援会として発展し、大久保はその初代理事長に就任しました。東京大空襲で寮が焼失した際には、個人的な保証で融資を受け、寮の再建に尽力。1970年（昭和45年）まで理事長を務め、その功績が認められ、前年には藍綬褒章を授与されています。

大久保の妻は大審院院長を務めた池田寅二郎の妹であるスミ。また、フランス文学者として知られる大久保輝臣は長男です。

参考文献

矢尾板正雄『昭和金融政策史』皇国青年教育協会
穂積重遠『大久保偵次君のために弁ず』
北海道在京学生後援会『北海寮』
東京六華同窓会『東京六花同窓会会報 第68号』
秦郁彦『戦前日本官僚制の制度・組織・人事』東京大学出版会、1981年。
秦温信『北辰の如く 関場不二彦伝』北海道出版企画センター、2011年。ISBN 978-4-8328-1103-4。
『大衆人事録 東京篇』（第13版）、1939年。

外部リンク

北海道庁（新）北海寮について (2)
神戸大学電子図書館
連盟総会随員 東京日日新聞 1921.8.24
* 帝人事件に無罪判決 大阪朝日新聞 1937.12.17 夕刊

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