北支那開発

北支那開発株式会社とは

北支那開発株式会社は、1938年に設立され、1945年まで中国の華北地方において経済開発事業を展開した日本の特殊会社です。第二次世界大戦下の日本の大陸政策において重要な役割を担いました。

設立の背景

華北地域における経済開発を目的とした国策会社としては、すでに南満洲鉄道（満鉄）の子会社である興中公司が存在していました。しかし、華北の広大な資源開発を興中公司のみで対応することは困難であり、また、興中公司による資源独占を警戒する内地財閥からの反発もありました。そこで、陸軍省軍務課が主導となり、新たな会社設立が計画されたのです。

1938年4月には、第73帝国議会において「北支那開発株式会社法」が可決され、同年11月の創立総会をもって会社が正式に発足しました。これにより、日本の大手財閥が潤沢な資金を背景に、華北地域への本格的な進出を開始することとなりました。会社設立に先立ち、同年5月には北支那開発株式会社法36条に基づく設立準備事務所が東京市麹町区に開設され、6月には会社定款が認可、株主の募集や役員選任などが進められました。

1937年の日中戦争勃発以降、中国国内の治安は悪化の一途をたどっており、機関車の盗難や鉄橋の破壊などが頻発し、経済活動に深刻な影響を与えていました。そのため、北支那開発株式会社は、興亜院経済部の監督下に置かれることとなりました。

資本構成と主要株主

設立当初の資本金は3億5000万円、発行株式数は700万株でした。そのうち半分の350万株（1億7500万円相当）を日本政府が引き受け、残りの半分が一般公募されました。

一般公募では、315万株が一般株主に割り当てられ、残りは軍人会後援会や軍人遺族の関係者に優先的に割り当てられました。主要な株主としては、住友財閥、三井財閥、三菱財閥などの大手財閥のほか、生保協会、電力連盟、株式取引員、鋼材連合会、石炭連合会などが名を連ねました。これらの業界団体は、カルテルを通じて株式の持ち分を分配していたとされています。

事業内容

本社は東京市に置かれ、華北交通、華北電業、大同炭礦などを子会社化し、華北地域の開発促進と統合調整を目的として事業を展開しました。太平洋戦争勃発後は、資源の増産が主要な事業となりました。

北支那開発株式会社法に規定された事業目的は以下の通りです。

交通、運輸及港湾に関する事業
通信に関する事業
発送電に関する事業
鉱産に関する事業
塩の製造、販売及利用に関する事業
その他

ただし、同社は経済開発のための進出企業間の統合調整を行い、直接的な事業運営には関与せず投融資のみを行う、現在の持株会社に近い性格を持っていました。

歴代総裁

初代総裁には貴族院議員で前拓務大臣の大谷尊由が就任しましたが、急逝したため、その後は賀屋興宣、津島壽一、八田嘉明が総裁を務めました。特に賀屋興宣は、北支分離工作を指揮し、在任中には内地企業と中国企業との合弁による主要炭鉱の開発などに辣腕を振るいました。

大谷尊由：1938年11月7日 - 1939年8月1日
賀屋興宣：1939年8月14日 - 1941年10月18日
津島壽一：1941年11月7日 - 1945年2月21日
八田嘉明：1945年3月6日 -

終焉

1945年8月、ソビエト連邦の侵攻と日本のポツダム宣言受諾により、満洲国が崩壊すると、北支那開発株式会社もその機能を失いました。

同年9月30日、GHQは日本政府に対し「植民地銀行、外国銀行及び特別戦時機関の閉鎖」に関する覚書を交付し、この覚書に基づき、北支那開発株式会社の即時閉鎖が決定されました。

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