大井西村

大井西村

岡山県の中北部に位置し、昭和の中頃まで存在した大井西村は、現在の津山市に含まれる地域です。具体的には、今日の津山市坪井上、坪井下、そして中北上の各地区に相当します。この村は、明治から昭和にかけて地域の変遷を見守り、農業を中心に営まれた豊かな自然に囲まれた地域でした。

村の成り立ちと歴史

大井西村は、1889年（明治22年）6月1日に施行された町村制によって誕生しました。それまで久米北条郡に属していた坪井上村、坪井下村、中北上村の三つの村が合併し、一つの自治体として発足したものです。村役場は、合併の中心となった坪井下地区に置かれ、新たな村の行政拠点となりました。

その後、郡の再編を経て、1900年（明治33年）4月1日には、久米北条郡が久米南条郡と統合され、新たに久米郡が誕生しました。大井西村もこの久米郡に属することになります。

時代の流れと共に、自治体の合併が進む中で、大井西村もその歴史に幕を下ろすことになります。1952年（昭和27年）8月1日、近隣の久米郡大東村と合併し、新たな自治体である大井町が誕生しました。これにより、大井西村はその名を地図上から消しましたが、合併後の大井町、そして現在の津山市の一部として、その地域性は受け継がれています。

地理と自然

大井西村を構成していたのは、前述の通り坪井上、坪井下、中北上の三つの地区です。これらの地域には、岩屋川、久米川、福本川といった河川が流れ、地域の水資源として利用されていました。また、岩屋山、加治子山、取首山といった山々が村の景観を形成し、豊かな自然環境を提供していました。これらの地形や水系は、村の生活や産業、特に農業に深く関わっていました。

経済活動

大井西村の主な経済活動は農業でした。地域の気候や地形を生かした農業が盛んに行われ、人々の暮らしを支えていました。当時の農業の発展に貢献した篤農家として、『大日本篤農家名鑑』には久山荘平や河本芳太郎といった人物の名が記されており、彼らが地域の農業技術向上や振興に尽力していたことがうかがえます。

交通網

村の交通としては、鉄道と道路がありました。鉄道については、JR姫新線が村内を通り、坪井駅が地域の玄関口として利用されていました。また、道路網としては、地域を結ぶ主要なルートとして国道181号線が村を縦断していました。さらに、岡山県道339号西一宮中北上線や岡山県道341号坪井下栃原線といった県道も整備され、近隣地域とのアクセスを担っていました。高速道路としては、中国自動車道が村の上空を通過していましたが、村内にインターチェンジやパーキングエリアなどの施設はありませんでした。特筆すべき点として、廃止当時は計画段階あるいは建設途上だった道路も存在したとされています。

教育

村には、地域の子どもたちの学び舎として喬松小学校がありました。この学校は現在も津山市立の小学校として、地域の教育を担い続けています。

歴史と文化

大井西村とその周辺地域には、地域の歴史を伝える史跡や文化施設が点在しています。中でも岩屋城跡は、かつての歴史的な出来事を物語る旧跡として知られています。また、鶴坂神社は地域の信仰を集める重要な場所であり、村の人々の精神的な支えとなっていました。

ゆかりのある人物

大井西村ゆかりの人物としては、久山知之が挙げられます。彼は地域の発展に貢献した久山工業所の所長を務めたほか、衆議院議員、司法政務次官を歴任するなど、政治家としても活躍しました。地域から輩出された著名人として、その名は記憶されています。

大井西村は、短くない期間、地域の歴史を刻みましたが、周辺地域との合併を経てその役割を終えました。しかし、かつて村を構成していた地域は、今も変わらず人々の営みが息づく場所として、その歴史と文化を受け継いでいます。

もう一度検索