久米南条郡

久米南条郡（くめなんじょうぐん）

久米南条郡は、かつて岡山県（旧国名：美作国）に置かれていた郡の一つです。近世初頭に、それまで存在した久米郡が二つの地域に分割されて設けられました。この分割により、北部に久米北条郡、南部に久米南条郡が誕生しました。分割される以前には、久米南郡と呼ばれることもあったとされています。

郡域

1878年（明治11年）に行政区画としての郡が発足した時点の郡域は、現在の広範な地域にまたがっています。具体的には、現在の岡山市北区の一部（建部町福渡、建部町川口、建部町下神目、建部町豊楽寺など）、久米郡久米南町の全域、久米郡美咲町の一部（吉井川の西側、かつ頼元、原田、越尾の地域より東側）、そして津山市の一部（吉井川の南側にあたる地域の東部）に、その範囲がほぼ相当します。

歴史

近世から明治初年

久米南条郡は、江戸時代初期に久米郡が南北に分割されたことによって成立しました。明治の初め（慶應4年頃）には、郡内には72の村が存在し、複数の藩や幕府の預地によって治められていました。慶應4年（1868年）5月には、それまで龍野藩の預地であった地域が鶴田藩の領地へと変わるという動きがありました。

明治維新後の変遷

明治4年（1871年）7月14日に施行された廃藩置県により、それまでの藩による支配は廃止され、久米南条郡の地域は鶴田県、古河県、津山県の管轄下に置かれました。同年11月15日には、第1次府県統合が行われ、郡全域が新たに設置された北条県の管轄となりました。さらに、明治5年（1872年）にかけて郡内の村の統廃合が進められ、越尾上村と越尾下村が合併して越尾村となるなど、いくつかの村が統合されました。この結果、村の数は72から64へと減少しました。八神村が塚角村に合併されたのもこの時期です。

明治9年（1876年）4月18日には、第2次府県統合により、北条県が岡山県に編入されたため、久米南条郡は岡山県の管轄となりました。同年中には、暮田村と古城村が合併し平福村が誕生するなど、さらに村の再編が進み、村数は63となりました。

行政区画の発足と再度の再編

明治11年（1878年）9月29日、郡区町村編制法が岡山県で施行されました。これにより、久米南条郡は近代的な行政区画として正式に発足しました。郡役所は下弓削村（現在の久米郡久米南町内）に設置され、地域の行政事務を担いました。明治19年（1886年）には、かつて塚角村に合併されていた八神村の一部が再び分かれて独立した村となり、郡内の村数は64に戻りました。

明治22年（1889年）6月1日、全国的に町村制が施行されたことに伴い、久米南条郡でも大規模な村の再編が行われました。それまでの多数の小規模な村が統合され、以下の11の新しい村が誕生しました。

弓削村：下弓削村、上弓削村、西山寺村、松村、塩之内村、羽出木村（現在の久米郡久米南町）
吉岡村：大戸下村、大戸上村、定宗村、山之上村、藤原村、久木村、小瀬村、栗子村、塚角村、八神村（現在の久米郡美咲町）
福岡村：横山村、八出村、小桁村、金屋村、荒神山村、種村、押淵村（現在の津山市）
佐良山村：大谷村、井口村、北村、一方村、中島村、平福村、皿村、高尾村、福田村（現在の津山市）
豊岡村：原田村、越尾村、新城村、金堀村（現在の久米郡美咲町）
稲岡北村：小原村、西幸村、頼元村、山之城村（現在の久米郡美咲町）
稲岡南村：北庄里方村、北庄山手村、南庄村（現在の久米郡久米南町）
龍川村：上二ヶ村、下二ヶ村、仏教寺村、全間村、泰山寺村（現在の久米郡久米南町）
龍山村：上籾村、中籾村、下籾村、別所村（現在の久米郡久米南町）
福渡村：福渡村、川口村、下神目村、豊楽寺村（現在の岡山市北区）
* 神目村：神目中村、上神目村、宮地村、下二ヶ山手村、峠村、京尾村、南畑村、安ヶ乢村（現在の久米郡久米南町）

郡の廃止

明治33年（1900年）4月1日、郡制が施行されました。これにより、久米南条郡は同じ美作国に位置する久米北条郡と統合されることとなりました。両郡の区域をもって、新たに「久米郡」が発足したため、久米南条郡は同日をもってその歴史に幕を閉じ、廃止されました。

現在

旧久米南条郡の範囲は、現在、岡山県内の岡山市、久米郡久米南町、久米郡美咲町、そして津山市の一部として引き継がれています。

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