大倉和親

明治の実業家、大倉和親：日本の陶磁器産業を牽引した生涯

大倉和親（1875年-1955年）は、明治から昭和にかけて活躍した日本を代表する実業家の一人です。彼の名は、現代でも私たちに馴染み深い数々の企業と深く関わっています。日本陶器（現ノリタケ）、東洋陶器（現TOTO）、日本碍子、伊奈製陶（後のINAX、現LIXIL）、そして大倉陶園。これら老舗企業の社長を歴任した彼の生涯は、日本の陶磁器産業発展の歴史そのものです。

1875年、実業家として名高い大倉孫兵衛の長男として東京日本橋に生まれた大倉和親は、慶應義塾正則本科を卒業後、名門企業である森村組に入社。その後、更なる研鑽を求め渡米、イーストマン商業学校で学びました。森村ブラザース（森村組のニューヨーク支店）勤務を経て9年間の欧米滞在を終え帰国すると、1904年（明治37年）、日本陶器合名会社を設立し、代表社員に就任します。これは、後のノリタケカンパニーリミテドの礎となる出来事でした。

1917年（大正6年）、日本陶器株式会社の社長に就任。同年に東洋陶器（現TOTO）、日本碍子株式会社の初代社長も兼任するなど、その活躍は多岐に渡りました。さらに1924年（大正13年）には伊奈製陶（後のINAX）を設立、1936年（昭和11年）には日本特殊陶業の設立にも参画するなど、陶磁器関連企業の育成にも大きく貢献しました。

大倉和親の活動は陶磁器業界に留まりませんでした。森村組、森村商事、日本玩具などの取締役も歴任し、幅広い事業に携わりました。これは、彼が単なる陶磁器業界の経営者ではなく、日本の近代経済発展に大きく貢献した多角経営者であったことを示しています。

彼の多様な経営手腕は、単なる経営能力の高さだけでなく、時代を見据えた先見性と、企業を成長させるための的確な判断力に基づいていたと考えられます。その行動力は、彼が率いた企業の成長と発展に大きく貢献し、日本の産業史に大きな足跡を残しました。

1955年（昭和30年）、79歳でこの世を去った大倉和親。彼の功績は、日本の陶磁器産業のみならず、近代日本の経済発展に多大なる影響を与えました。数々の企業の設立や発展に携わり、日本経済の隆盛を支えた彼の生涯は、現代においても学ぶべき点が多く存在する、貴重な歴史の一端を担っています。

家族について

大倉和親の家族もまた、日本の経済界に影響を与えた家系でした。父は大倉孫兵衛、母は千葉県出身の鈴木与四郞の長女、妻は明治製糖会長の小川䤡吉の二女と、いずれも名家の子女でした。彼には、6人の子女がいました。それぞれの子供たちがどのような人生を歩んだのかは、今後の更なる調査が必要ですが、大倉家の家風や教育が、彼らの人生に少なからず影響を与えたことは想像に難くありません。

参考文献

大倉和親の生涯を知る上で、以下の参考文献が参考になります。

三田商業研究会編 編『慶應義塾出身名流列伝』実業之世界社、1909年
砂川幸雄『製陶王国をきずいた父と子』晶文社、2000年

これらの文献から、大倉和親の人物像やその時代背景、そして日本の陶磁器産業における貢献度をより深く理解することができます。

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