大公報

大公報（Ta Kung Pao）

大公報は、中国・香港で発行されている新聞であり、その歴史は20世紀初頭にまで遡ります。創刊以来、政治的な変遷や社会情勢の変化に翻弄されながらも、中国語新聞として最長の歴史を誇ります。現在では、中国共産党の機関紙としての役割を担い、香港を拠点に情報発信を続けています。

創刊と初期の活動

大公報は、1902年に満州族の英斂之によって天津のフランス租界で創刊されました。英斂之は、キリスト教に入信しており、戊戌政変では変法派を支持した経歴を持ちます。創刊当初は、駐華フランス公使や天津のキリスト教会司教、清朝の満州貴族など、多様な人々が出資していました。その後、社屋は天津日本租界内に移転しました。

大公報は、創刊当初から政治問題への積極的な関与で知られ、当時の清朝に対し、言論の自由がない状況下で政治批判を行いました。そのため、清朝から発禁処分を受けることもありましたが、治外法権下の租界内では弾圧を免れることができました。英斂之は清朝の立憲君主制改革を主張し、革命による王朝打倒には批判的でしたが、辛亥革命により清朝が倒れると、1912年に経営から手を引きました。

中華民国時代

英斂之の引退後も、大公報は政治批判を続け、袁世凱の独裁を批判するなど、権力に対する監視の役割を果たしました。しかし、その後、軍閥の安徽派や日本と接近した時期もありました。1925年には一時休刊となりましたが、翌年、元記者の胡政之らが大公報の名前を買い取り、発行を再開しました。満州事変や天津事変の影響で、社屋は再び天津フランス租界へと移転しました。また、1936年には上海版の発行も開始されました。

国民党政権との関係については、批判もするが基本的には擁護する「小罵大幇忙」と評されることもありますが、この見方には批判もあります。国共内戦期には、新聞社の中で初めて共産党のソビエト区に記者を派遣し、長征や共産党の動向を報道しました。

日中戦争時代

1937年、盧溝橋事件により日中戦争が始まると、大公報は戦火を避けるため、天津版を停刊し、漢口へ、さらに重慶へと拠点を移しました。上海版も停刊し、香港へと移転しました。太平洋戦争開戦により香港版も一時停刊し、桂林に拠点を移転しました。戦後は、天津版、上海版、香港版が復刊し、重慶版と合わせて4地域で発行されました。1946年には本社が上海に定められました。

中華人民共和国期

1949年の中華人民共和国成立後、香港以外の地域で発行されていた大公報は、次第に整理・消滅していきました。重慶版は1952年に停刊し、「重慶日報」に改組されました。天津版は「進歩日報」と改名しましたが、創刊号で旧「大公報」を自己批判しました。共産党政権下で存続した大公報は、本社を北京に移し、天津版と上海版を合併して北京版「大公報」を1956年から発行しました。

文化大革命の際、北京の「大公報」では多くの社員が弾圧され、1966年に停刊しました。その後「前進報」として再発刊しましたが、紅衛兵の襲撃により再び停刊し、中国大陸での大公報の歴史は幕を閉じました。

香港の大公報

一方、イギリスの植民地であった香港では、「大公報」の発行が継続されました。1952年には、三・一事件を巡り、香港当局を批判する中国側の声明を掲載したため、一時停刊処分を受けました。文革に至るまでの香港版大公報は、「愛国報」「左派」「左報」と評されています。

大公報ジャパン・大公網JapanOnLine

大公報は、日本の情報やニュースを掲載する「大公報 日本専版」を制作するため、2009年に大公報ジャパン株式会社を設立しました。日本の経済、産業、文化、観光など多岐にわたる情報を、香港だけでなく中国本土の読者にも発信しています。2010年には電子版「大公網」の日本版「大公網・日本頻道」を公開し、2011年にはウェブサイト「大公網JapanOnLine」を開設し、日本の情報を発信しています。

大公報は、その長い歴史の中で、中国の政治・社会情勢の変化に影響を受けながらも、ジャーナリズムの役割を果たし続けています。現在では、香港を拠点に、中国内外の読者に向けた情報発信を続けています。

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