大典太

大典太について

大典太（おおてんた / おおでんた）は、平安時代後期に作られたとされる日本刀（太刀）であり、国宝に指定されています。現在は、公益財団法人前田育徳会が所蔵しています。国宝指定名称は「太刀銘光世作(名物大典太)」です。天下五剣の一振りに数えられていますが、いつからそう呼ばれるようになったかは定かではありません。

刀工・三池典太光世

大典太は、平安時代末期に筑後国で活躍した刀工、三池典太光世によって作られたとされています。光世は筑後国三池（現在の福岡県大牟田市）を拠点とし、三池派の開祖として知られています。光世という銘は、平安時代末期から室町時代中期にかけて三池派の刀工に受け継がれていましたが、本作は永保年間（1081-1084年）に活躍した初代光世によって作られた、唯一の在銘の太刀です。

名前について

大典太という名前の由来は明確ではありません。刀剣学者の佐藤寒山は、その著書で「大」の字が、刀の出来が最も優れていることを示すと述べています。ただし、刃長が長いからなど、単に刀が大きいという意味ではないとも指摘しています。また、小笠原信夫は、その堂々とした姿が名前の由来ではないかと推測しています。

足利将軍家から前田家へ

大典太は、元々室町幕府初代将軍である足利尊氏の愛刀であり、足利将軍家の重宝として伝来しました。その後、室町15代将軍の足利義昭から豊臣秀吉へ贈られ、さらに前田利家に渡ったとされています。前田家では、大典太は唐櫃に収納され、注連が張られるなど、非常に大切に扱われました。

伝承と試し斬り

大典太には、病気の治癒と切れ味に関する伝承が残されています。病人の枕元に置くと病が治るとされ、返却すると再発するため、何度も貸し借りされた結果、最終的に贈与されたという話があります。また、徳川八代将軍吉宗が編纂させた『享保名物帳』には、豪姫のために利家が秀吉から贈与されたと記されています。

さらに、大典太は切れ味を試すため、山田浅右衛門吉睦によって試し斬りが行われました。死刑囚の遺体を使った試し斬りでは、土壇を深く切り込み、三つ胴を両断するなど、その凄まじい切れ味を示しました。

近代以降

明治時代には、明治天皇夫妻が行幸啓で前田家を訪れた際、大典太が天覧に供されました。その後、1956年に重要文化財、1957年に国宝に指定され、その価値が公的に認められました。国宝指定の際には、その重要性から、会議に実物が持ち込まれないほど厳重に扱われたという逸話が残っています。現在は、前田育徳会がその保存と管理を行っています。

作風

大典太の刃長は65.1センチメートルで、身幅が広く、刀身の短い独特な体配を持っています。刀身には腰樋が掻かれ、表面の鎬には三池樋と呼ばれる幅広で浅い樋があります。茎には「光世作」の銘が刻まれています。

鍛えは、大板目流れる。刃文は、沸出来の細直刃で、ほつれごころがあり、わずかに足入り、物打辺に二重刃が交じります。平安時代後期の他の刀剣とは異なる作風が見られます。

外装

大典太には、茶色皺革包に萌黄糸巻を施した鬼丸拵（おにまるこしらえ）の外装が付属しています。この外装は桃山時代の作とされ、前田家が本阿弥光徳または光甫に命じて作らせたと考えられています。ただし、別の説では、1669年に本阿弥光甫が作ったとされています。鎺（はばき）の桐紋は前田家の梅鉢紋に替えられ、目貫（めぬき）も梅鉢紋があしらわれています。

収納

大典太は、外箱と中箱に収納されています。外箱は春慶塗で、中箱は桐白木でできています。

まとめ

大典太は、その歴史、伝承、作風、外装など、様々な面で魅力的な日本刀です。国宝に指定されているだけでなく、多くの人々に愛され、語り継がれてきた名刀と言えるでしょう。

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