大内輝弘の乱

大内輝弘の乱

大内輝弘の乱は、戦国時代の終わりに周防・長門国で勃発した、旧大内氏の遺臣たちによる反乱です。永禄12年（1569年）、大内氏の再興を目指し、大友氏の支援を受けた大内輝弘が挙兵したことで、この戦乱は始まりました。

背景

旧大内家の動向

かつて周防・長門国を支配していた大内氏は、毛利元就の勢力拡大によって滅亡しました。しかし、大内氏の旧臣の中には、新たな領主である毛利氏に服従せず、大内氏の再興を願う者が少なくありませんでした。毛利氏の支配が確立して間もない時期には、旧大内氏の重臣たちが大内義隆の遺児とされる人物を擁立して挙兵しましたが、毛利氏によって鎮圧されています。

一方で、大内義興の弟である大内高弘の子、大内輝弘は、大友氏の客将として豊後国に身を寄せていました。輝弘は、大内氏の再興を悲願としており、旧臣たちもその帰還を待ち望んでいました。しかし、彼らが頼ろうとした大内氏の残党は、毛利氏によって討伐され、輝弘は孤立を余儀なくされました。

毛利氏の九州進出

尼子氏を滅ぼした毛利氏は、勢力を拡大し、伊予国へも出兵しました。そして、永禄12年（1569年）には、大内氏の後継を自認し、博多の権益を狙って豊前国・筑前国へ侵攻を開始しました。毛利氏は、大友氏との全面対決へと突き進んでいきます。

騒乱の経緯

輝弘の周防上陸

毛利氏と大友氏の対立が激化する中、大友氏家臣の吉岡長増は、毛利軍の背後を撹乱する作戦を立案しました。その一環として、大友氏は大内輝弘を周防国へ送り込むことを計画します。輝弘は、大友水軍の護衛を受け、軍勢2000を率いて周防国へ上陸を果たしました。

永禄12年（1569年）10月11日、輝弘軍は秋穂浦・白松に上陸。大内氏の復帰を知った遺臣たちは、次々と輝弘軍に合流し、その勢力は瞬く間に拡大しました。翌日には、その軍勢は6,000にも膨れ上がったとされています。

山口での攻防

10月12日、輝弘軍は山口へ侵攻。毛利方は防戦しましたが、数に勝る輝弘軍は激戦の末に毛利軍を破り、山口を制圧しました。輝弘軍は龍福寺と築山館を本営とし、毛利軍が籠もる高嶺城の攻略を開始しました。高嶺城主の市川経好は不在でしたが、城兵たちは必死に防戦し、城を守り抜きました。

長門国で九州攻略の指揮をしていた毛利元就は、急報を受けると九州からの撤退を指示。吉川元春率いる救援軍が山口へ急行しました。元春は、大内方に組した者を徹底的に討伐しながら進軍し、輝弘軍を包囲していきます。その一方で、高嶺城は依然として落ちず、輝弘軍は次第に孤立を深めていきました。

大内輝弘の最期

10月25日、輝弘の手勢は800にまで減少し、上陸地点の秋穂浦へと撤退を開始しました。しかし、すでに軍船はなく、輝弘は東へと逃れようとしました。しかし、毛利軍の追撃は厳しく、輝弘は敗走を重ねます。そして、佐波郡富海まで逃れたものの、最後は浮野峠の茶臼山で毛利軍に追い詰められ、自害して果てました。輝弘の首は長府へ送られ、首実検の後、豊後塚に埋められたと伝えられています。

戦後

毛利氏

毛利氏は、この反乱を鎮圧した後、尼子氏残党を討伐し、周防・長門国における支配を確立しました。しかし、この戦いのために主力軍を九州から撤退させたため、九州での勢力は縮小しました。その後、毛利氏は織田信長との対立を深め、九州進出から手を引くことになります。

大友氏

大内輝弘は敗死したものの、大友氏は毛利軍を撤退させることに成功し、筑前国の領地を奪還しました。この戦いにおいて、大友氏は最大の利益を得たと見ることができます。その後、大友氏は九州の覇権をめぐり、龍造寺氏や島津氏との対立を深めていきます。

大内氏

大内輝弘の死によって、大内氏は名実ともに滅亡しました。しかし、大内氏の血筋は、山口氏として江戸時代まで存続しています。

結論

大内輝弘の乱は、戦国時代の終焉期における、旧勢力の最後の抵抗を示す出来事でした。この戦乱は、毛利氏の西国における覇権を確立させるとともに、九州における勢力争いの新たな展開をもたらしました。

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