山口氏

山口氏

山口氏（やまぐちし）は、日本各地に存在する複数の氏族です。それぞれの山口氏は、出自や歴史的背景を異にしています。

武蔵山口氏（村山党）

武蔵山口氏は、桓武平氏の流れを汲む武蔵七党の一派、村山党から派生した氏族です。平安時代末期から戦国時代にかけて、武蔵国入間郡山口（現在の埼玉県所沢市山口）を領しました。武蔵国には、横山党から派生した山口氏も存在します。

村山党の祖である平頼任は、武蔵国多摩郡村山（現在の東京都武蔵村山市）を領し、その孫の家継が入間郡山口に住んで山口を名乗ったのが始まりとされています。代々、山口城を居城としました。

保元の乱では、村山党の金子家忠や仙波家信らと共に、山口六郎が源義朝に従って戦いました。承久の乱では、山口兵衛太郎が負傷しています。

山口高清の時代には、武蔵平一揆で河越氏側につき、鎌倉公方足利氏満方の上杉憲顕に攻められ、山口城は落城しました。その後、永徳3年（1383年）に、南朝の力を得た高清の子・山口高治は、祖父の山口高実と共に再び兵を挙げ、足利氏満と戦いましたが敗北。山口城に火を放ち自害しました。高治の子・山口高忠は上杉氏に仕え、その後、上杉氏が没落すると後北条氏に仕えました。後北条氏滅亡後、子孫の山口大善は徳川氏に仕えています。

一族

山口家継
山口高実
山口高清
山口高治
山口高忠
山口高広
山口高恒
山口高直
山口高泰
山口高種
山口高俊
山口高伯

牛久山口氏

牛久山口氏は、大内氏の庶流にあたる武家・華族です。江戸時代には常陸国牛久藩（現在の茨城県牛久市）を領する譜代大名家として続き、維新後には華族の子爵に列せられました。

室町時代の守護大名・大内義弘の次男・大内持盛を祖とし、任世の代に大内氏の本拠地である周防国山口から尾張国愛知郡に移り、その子・盛幸の代から山口氏を称しました。

盛幸の子・山口重政は、はじめ織田信長の家臣・佐久間正勝に仕え、小牧・長久手の戦いでは信長の次男・信雄に仕え、以後徳川家康に仕えました。慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いにおける戦功により、上総国と武蔵国に合計1万石の所領を与えられ、大名となりました。慶長16年（1611年）には下野国に5000石を加増され、合計1万5000石を領しました。

慶長18年（1613年）に重政は姻戚関係にあった大久保忠隣に連座して改易されましたが、大坂の陣における戦功により、寛永6年（1629年）に常陸国と遠江国において1万5000石の所領を改めて与えられ、大名に復帰しました。

2代藩主・弘隆のとき、寛永12年（1635年）に弟・山口重恒に5000石を分与したことで1万石余となりました。また、彼の代に領地が常陸国と下総国に集められ、寛文9年（1669年）に常陸牛久に陣屋を構えました（牛久藩）。その後、牛久藩は山口氏の支配で廃藩置県まで続きました。最後の藩主・弘達は、明治2年（1869年）6月23日に版籍奉還で牛久藩知事に任じられ、明治4年（1871年）7月15日の廃藩置県まで藩知事を務めました。

明治2年（1869年）6月17日の行政官達で公家と大名家が統合されて華族制度が誕生すると、山口家も大名家として華族に列しました。明治17年（1884年）7月7日の華族令の施行で華族が五爵制になると、同月8日に旧小藩知事として弘達が子爵に列せられました。弘達は学習院教授を務めるとともに貴族院の子爵議員に当選して務めました。

弘行の代に、山口子爵家の邸宅は東京市渋谷区豊分町にありました。

一族衆

山口持盛（大内持盛）
山口重俊
山口重勝
山口重政
山口弘隆
山口重貞
山口弘豊
山口弘長
山口弘道
山口弘務
山口弘致
山口弘封
山口弘穀
山口弘敞
山口弘達

相模山口氏（三浦党）

相模山口氏は、桓武平氏の流れを汲む三浦一族から派生した氏族です。平安時代末期から鎌倉時代にかけて、相模国三浦郡山口（現在の神奈川県葉山町上山口、下山口）を領しました。三浦義澄の次男・有綱（次郎有綱、兵衛尉有綱。有継と表記される場合もあります）を祖とします。『吾妻鏡』によれば、源頼朝に従い、東大寺大仏供養（建久6年3月9日）の際に上洛したと記されています。

尾張山口氏

尾張山口氏は、戦国時代の守護大名・大内義隆の末裔にあたります。毛利氏への配慮から大内姓を名乗ることができず、大内氏の本拠地である周防国山口の地名をとって山口氏と称しました。

赤井氏庶流山口氏

赤井時家の四男・山口直之が赤井氏から独立し、信濃国山口（現在の岐阜県中津川市山口）を領して興した家系です。直之の嫡子・山口直友は徳川幕府の旗本となり、直友の弟・直行は島津氏に仕えました。

主な人物

山口直之
山口直友
山口直治：甲府藩家老。
山口直矩：甲府藩家老。
山口直安：甲府藩主・徳川綱豊に仕え、綱豊が将軍家宣となるのに従って江戸に入り、旗本寄合（知行3000石）となりました。
山口直郷：一橋家家老。
山口直承
山口直清：宇和島藩第5代藩主・伊達村候の次男で、養子。日光奉行、大坂町奉行などを歴任。
山口直勝：伊達宗城・宗孝の実父。
山口直信：大目付・勘定奉行などを歴任。伊達宗敬の実父。
山口直衛：旗本・佐野茂好の子で、養子。

宇治田原山口氏

山城国宇治田原城の城主であった山口秀景（甚介、諱は長政とも）の系統です。秀景の子・山口宗永は豊臣政権の奉行として活躍し、加賀国大聖寺城の城主となりましたが、関ヶ原の戦いの加賀戦線において戦死しました。子孫は松江藩に仕え、経済官僚の山口宗義、建築家の山口半六、物理学者の山口鋭之助兄弟はその末裔です。鋭之助の子は海軍提督の山口多聞です。

秀景の婿養子・山口光広は江戸幕府に仕え、旗本となっています。

古代氏族の山口氏

神護景雲元年（767年）に、武内宿禰流波多氏の一族である山口犬養という人物が山口朝臣姓を与えられています（『続日本紀』）。その後、山口朝臣春方、岑世、連松の名が見えます。

坂上氏の後裔である山口直からは、忌寸姓の山口氏や朝臣姓山口氏が輩出されています。山口忌寸からは平安時代には山口西成などが出ています。

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