吉岡長増

吉岡長増（よしおか ながます）

生涯

吉岡長増は、戦国時代の武将で、豊後国の大名・大友氏の一族である吉岡氏の当主です。大分郡高田庄の鶴崎城と千歳城の城主を務め、主に大友義鑑・義鎮（宗麟）父子の二代にわたって仕えました。法名は宗歓（そうかん）です。

出自

吉岡氏の出自については、大友親秀の子・頼宗が野津氏を称し、その子・親次が吉岡氏を称したとされています。しかし、当時の系図は焼失しており、現在伝わる系図は後世に作り直されたものです。そのため、長増以前の人物については不明な点が多く、長増の父親も吉岡重孝とされていますが、確証はありません。

大友義鑑の時代

長増の初期の活動については不明な点が多いですが、大友義長から偏諱（「長」の字）を受けていることから、義長存命中には元服を済ませていたと推定されます。長増が史料に登場するのは、義長の子・義鑑の時代からです。

長増は、吉岡氏で初めて加判衆に就任し、少弐氏の援護のため大内氏と戦いました。天文元年（1532年）には、陶興房が少弐氏を滅ぼそうと肥前国に侵攻した際、長増は後陣の大将として4千騎を率いて出陣し、豊前国、筑後国、筑前国を転戦しました。筑後国では鏡城を落として陶軍の輸送路を遮断するなどの戦功を挙げました。天文2年（1533年）には、大内義隆の命令を受けた宇佐郡衆らが豊後国に侵攻した際、長増は大将となってこれを撃退しました。しかし、天文3年（1534年）には加判衆を解任され、その後しばらく目立った活動は見られません。この時期に、義鑑から偏諱を受けて鑑忠（あきただ）と改名したとも言われています。

大友義鎮（宗麟）の時代

天文19年（1550年）に二階崩れの変が起こり、義鑑の嫡男・大友義鎮が家督を継承しました。義鑑は遺言で長増を重職に就けるよう指名しており、義鎮は長増を加判衆に再任しました。以後、長増は大友三老の一人として、臼杵鑑速や吉弘鑑理と共に重用されました。

長増は、豊前、筑前、肥後方面の政務を担当し、また日向国の土持氏も管轄しました。菊池義武の反乱鎮圧や、小原鑑元の謀反鎮定、秋月文種討伐などに参加し、龍造寺隆信の討伐にも出陣しました。永禄2年（1559年）には、田北鑑生、吉弘鑑理と共に領地境界線を裁定し、龍造寺隆信と神代勝利を和睦させるなど、多忙な日々を送っていました。

永禄4年（1561年）には、島津氏と伊東氏の和睦を成立させました。永禄5年（1562年）には、義鎮（宗麟）と共に出家し、宗歓と号しました。筆頭家老に就任すると共に、対毛利戦の総責任者となりました。

対毛利氏との戦い

永禄7年（1564年）に毛利氏と大友氏は和睦しましたが、毛利元就は調略を続けたため、大友氏は幕府に元就の違背を訴え出ました。永禄10年（1567年）の高橋鑑種討伐では、斎藤鎮実と共に城を包囲するなど、数々の戦に参加しました。

永禄12年（1569年）に毛利軍が大友領に侵攻すると（多々良浜の戦い）、大友軍は劣勢に立たされました。しかし、宗歓は山中鹿之助を援助して尼子氏の再興を支援し、毛利に下っていた尼子旧臣を寝返らせるなど巧みな戦略を駆使して、毛利軍を撤退させ、大友氏を滅亡の危機から救いました（大内輝弘の乱）。この頃、宗歓は引退を口にしていたとされます。

元亀元年（1570年）には、二度目の龍造寺隆信討伐で大友軍が敗北したため、宗歓は龍造寺隆信と和睦交渉を行い、人質の解放や領地の返還などを取り決めました。また、島津氏が天草を攻めるという噂が立った際には、宗歓・鑑速が対応し、過去に島津貴久と会見した経験から、島津氏側からも名前が知られていました。

晩年

元亀3年（1572年）11月まで家老職にあったとされ、天正元年（1573年）頃に没したと推測されています。享年は70代半ばから80ほどと思われます。

人物

長増は、臼杵鑑速と共に「豊州二老」と称され、大友氏の政治をよく担当しました。また、軍事面では立花道雪、臼杵鑑速、吉弘鑑理が「豊州三老」と呼ばれていました。

永禄4年（1561年）には、宇佐八幡の政務から身を引きましたが、奈多鑑基の横暴を宮司達から訴えられ、謝罪し、修繕などを約束しました。鑑基には鑑速らと共にこれまでの行為を叱責し、横領などを白紙にする意見を出し実行しました。

天正6年（1578年）に宗麟が島津討伐を強行した際には、家老の吉弘鎮信が「吉岡宗歓殿、臼杵鑑速殿がいたときは政道正しく、上下の礼儀に違わず、信賞必罰が行われた」と述べて、その政治手腕を高く評価しています。

宗歓は、しばしば義鎮を諫言していたとされ、一萬田鑑相、宗像鑑久兄弟と服部右京が義鎮に対し蜂起した際には、３人を庇ったとされています。

系譜

子には鑑興（後に鎮興に改名）、鑑盈、統定、林式部らがいますが、史料によって様々であり、確たる証拠はありません。

父：吉岡重孝（吉岡刑部）?
子：鑑興（室は妙林尼）
子：鑑盈
子：統定
子：林式部

脚注

『大友家婚姻録』

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