大司馬 (イングランド)

大司馬（Lord High Constable of England）

大司馬は、イギリスの国務大官の中で七番目に位置する重要な官職です。かつては軍政において非常に大きな権限を有していましたが、現在では主に戴冠式の際にだけ任命される名誉職に変わっています。以下では、この官職の歴史や役割について詳しく説明します。

概要

この役職は、イングランドにおいて中世の時代には軍事面で重要な役割を果たしていました。大司馬は、民兵の査閲、強制宿泊、部隊編成、さらには戦時中の軍事法廷の開廷など、多岐にわたる権限を持っていました。しかし、13世紀に入ると、司法的な性格も強まり、名誉や紋章に関する問題を扱うようになりました。

現在の大司馬は常任職ではなく、戴冠式の際に限って任命され、その際の実務はもっぱら軍務伯が担当します。本来の軍事的な機能はほぼ失われ、名誉職としての側面が強くなっています。

歴史的背景

大司馬の起源は、イングランド王妃マティルダが臣下であるマイルズ・ドゥ・グロースターにヘレフォード伯爵の爵位と共にこの役職を与えたことに始まります。その後、グロースター家が約200年間にわたり世襲し、さらにその男系が絶えると女系継承を経て、バッキンガム公爵スタッフォード家がこの役職を引き継ぎました。

中世の終わりに向けて、この役職の権限は次第に縮小されました。特に、エドワード・スタッフォードが私権剥奪された際に、国王ヘンリー8世は大司馬の役職を国家権力に統合しました。

スコットランドの大司馬との関係

スコットランドにも似たような役職が存在し、スコットランド大司馬（Lord High Constable of Scotland）は、国王不在時や戦場での指揮権を有していました。しかし、1707年のイングランドとの合同以降、この役職も単なる名誉職となりました。スコットランドの大司馬の称号は、エロル伯爵家が世襲しています。

歴代大司馬の一覧

大司馬の地位を占めた歴代の人物は以下の通りです。初代から第七代までの多くはドゥ・ブーン家に属し、後にスタッフォード家に引き継がれます。最初の大司馬はマイルズ・ドゥ・グロースターであり、彼の子孫がこの地位を保持しました。そして1521年に国王の権限に統合されるまで、この役職は重要な地位を保っていました。その後、名誉職として名簿に名を連ねた人々の多くは著名な貴族や公爵たちであり、近年では2023年にトニー・ラダキンが最後の大司馬として名誉職を承継しました。

結論

大司馬は、イギリスにおける歴史的かつ文化的に重要な官職ですが、現在の役割は名誉職に特化しています。中世における軍政的な機能から名誉職へと変遷した過程は、イギリスの政治的な歴史そのものを反映しています。

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