大型内行花文鏡

大型内行花文鏡について

大型内行花文鏡は、弥生時代に製作されたと考えられる青銅製の鏡であり、特に平原遺跡から出土したものが有名です。この鏡は、通常の銅鏡とは異なる特徴を多く持っています。

平原遺跡出土鏡

1965年（昭和40年）に、平原遺跡の1号墓（平原弥生古墳）から発掘された大型の内行花文鏡は、直径が46.5センチメートルにも及ぶ大型の青銅鏡です。発掘を担当した原田大六は、その出土状況から、鏡が故意に破壊されたのではなく、何らかの事故によって破損した破片が、四か所に分けて埋められたと推測しました。

通常の内行花文鏡とは異なり、この鏡の背面には銘字がなく、文様のみが施されています。鏡の文様は、中心の鈕を中心に8つの葉があり、その周囲に8つの内行花文、9本の同心円、外縁部が配されています。鏡の縁には、背面から正面に向けて約1,500本の弧状線が刻まれており、これが鏡面を形成しています。

原田大六は、この文様から「内行花文八葉鏡」と命名しました。当初、平原遺跡からは4面の大型内行花文鏡が出土したと報告されました。

発見された破片と復元

原田大六によると、出土した破片からほぼ完全な状態の2面が復元でき、発掘調査で得られた破片からは、3分の2程度の状態の鏡しか復元できなかったと報告されています。鏡の中心部である鈕は4つ出土しており、これらの情報から、原田は「内行花文八葉鏡は4面である」と結論付けました。

再調査と新たな発見

しかし、その後の前原市による再調査で、4面のうち1面（12号鏡）には、他の破片との接合箇所が不明な辺縁部の破片があることが判明しました。前原市教育委員会の依頼により、奈良文化財研究所が鉛同位体比法や発光分光分析を行った結果、この破片が12号鏡とは別の個体に属する可能性が指摘され、合計で5面である可能性が示唆されました（該当部位の12号鏡のみによる比較分析試験の結果）。

国宝指定と員数の変更

1990年の重要文化財指定時には、平原遺跡から出土した銅鏡は大型内行花文鏡4面を含め、合計39面分とされていましたが、上記調査の結果を踏まえ、2006年の国宝指定時の官報告示では、銅鏡の員数は1面増えて「40面分」と修正されました。

大きさと関連性

この「内行花文八葉鏡」の直径46.5センチメートルは、漢代の寸法でいうと「二尺」に相当します。また、この直径での円周は「八咫」となります。原田大六は、この円周「八咫」と『神道五部書』の『伊勢二所皇太神宮御鎮座伝記』に記された八咫鏡の記述「八頭花崎八葉形」との図像的な類似性、さらに『延喜式』伊勢大神宮式や『皇太神宮儀式帳』において、鏡を納める桶式の内径が「一尺六寸三分」（約49センチ）であることから、この銅鏡が伊勢神宮の御神体である八咫鏡と同型の鏡であると主張しています。

現在の展示

大型内行花文鏡のうち4面は伊都国歴史博物館（常設展示品はレプリカ）で、また1面は九州国立博物館で常時展示されており、実物を目にすることができます。

これらの情報を総合すると、大型内行花文鏡は古代日本の祭祀や文化を理解する上で非常に重要な遺物であり、その詳細な研究が今もなお続けられています。

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