原田大六

原田大六とは

原田大六（はらだ だいろく、1917年1月1日 - 1985年5月27日）は、日本の考古学者です。福岡県糸島市出身で、伊都歴史資料館（現在の伊都国歴史博物館の前身）の名誉館長を務めました。その強烈な個性と批判的な論調から「ケンカ大六」という異名を持ち、在野の考古学者として独自の道を歩みました。

生い立ちと学問への目覚め

原田大六は、測量士の父と母の長男として生まれました。大正6年生まれであることから「大六」と名付けられました。福岡県立糸島中学校（現福岡県立糸島高等学校）在学中に、安河内隆教諭の影響で考古学に傾倒。糸島郡内の遺跡を踏査し、採集した土器や石器は現在の糸島高等学校博物館の基礎となりました。しかし、考古学に没頭するあまり成績は低迷し、中学卒業後は上京して津上製作所に就職。計測器の研摩工として働きましたが、召集されて中国大陸各地を転戦し、終戦を迎えて復員しました。

考古学者への転身

復員後、中学校の代用教員を務めていた原田でしたが、憲兵だった経歴が原因で公職追放となり失職。その後、「おれは考古学をやる」と宣言し、土地、家、金、学歴、資料、書物、妻、職を持たない「八無斎」を名乗って、考古学研究に専念しました。1947年春からは、福岡市に住む中山平次郎博士に師事し、9年近くにわたり、マンツーマンの講義を受けました。この師弟関係が、原田の考古学研究の基礎を築きました。

考古学への貢献

原田は、地域の発掘・調査を通して、皇室の故郷が自身の郷土であると確信。小林行雄が提唱した「銅矛銅剣文化論」を批判し、その他の青銅器や鉄器が故意に除外されている点を指摘しました。また、古墳時代に副葬されるはずの銅鏡や鉄剣が意図的に除外された「隠蔽の誤謬」であると主張しました。さらに、古墳の起源を弥生時代後期の墳丘墓に求め、銅鏡の摩滅が「伝世鏡論」ではなく、鋳造時の不完全さによる「湯冷え」であると主張しました。これらの研究成果は、1950年に初の著作『日本国家の起源 -古墳文化形成過程の研究-』として発表されました。

平原遺跡の発掘と独自の解釈

1965年、原田は前原町有田で平原遺跡を発掘調査しました。2世紀後半の1号墓は、割竹形木棺や墳丘を持つ弥生時代末期の「弥生古墳」であり、37面もの銅鏡が出土。銅鏡・鉄製素環頭大刀・勾玉という三種の神器を彷彿させる副葬品、八咫鏡と平原遺跡出土鏡の類似性から古墳との共通性を指摘しました。さらに、墳丘墓付近の2つ一組の穴を鳥居と推定し、その向きがそれぞれ日向峠と高祖山に向いていることから、被葬者を太陽に関わる神事を行う人物と解釈。記紀の神代の記述は北部九州で起きた史実であり、平原遺跡の被葬者を玉依姫、つまり天照大神であると推測しました。これらの主張は、1966年に出版された『実在した神話』で展開され、当時の学会に大きな衝撃を与えました。

その後の活動と人物像

その後も、原田は沖ノ島の発掘調査に参加し、金属遺物の研究を行うなど、在野の考古学者として活躍しました。前原市が建設した伊都歴史資料館の初代館長に就任予定でしたが、脳梗塞により逝去。同資料館の名誉館長の称号が贈られ、館の前に銅像が建てられました。

原田は、その強烈な個性と攻撃的な論調から「ケンカ大六」と呼ばれていました。特にアカデミズムへの批判精神は強く、著書では大学教授を名指しで批判することも躊躇しませんでした。また、自宅には「面会謝絶」と書かれた札を掲げ、電話は「うるさい」という理由で設置せず、テレビは年末に修理して正月に少し見るだけで、すぐにアンテナを破壊するという徹底した生活を送っていました。

主な著作

原田大六は、多くの著作を残しました。主な著書には以下のようなものがあります。

『日本古墳文化-奴国王の環境-』（東京大学出版会、1954年）
『邪馬台国論争』（三一書房、1961年）
『磐井の叛乱 -抹殺された英雄-』（河出書房新社、1963年）
『実在した神話 -発掘された平原弥生古墳-』（學生社、1966年）
『万葉集発掘 -考古学による万葉発掘-』 (朝日新聞社、1973年)
『卑弥呼の鏡』（六興出版、1977年）
『平原弥生古墳　大日孁貴尊（おおひるめのむち）の墓（上下巻）』（葦書房、1991年）

論文

原田大六は、数多くの論文も発表しています。
「福岡県石ヶ崎の支石墓を含む原始墓地」 （『考古学雑誌』、1952年）
「鋳鏡における湯冷えの現象について一伝世による手磨れの可否を論ず」（『考古学研究』、1959年）
「平形銅剣の形成と編年」（『考古学雑誌』、1961年）
*「福岡県「平原弥生古墳」の問題点」（『古代学研究』、1966年）

まとめ

原田大六は、独自の視点と批判精神を持ち続けた、異色の考古学者でした。その研究は、当時の学会に大きな影響を与え、考古学の発展に大きく貢献しました。彼の生涯は、既存の学説にとらわれず、真実を追求する姿勢の大切さを教えてくれます。

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