平原遺跡

平原遺跡は、福岡県糸島市にある弥生時代後期の遺跡で、曽根遺跡群の一部として知られています。1982年に国の史跡に指定され、2000年には追加指定も受けています。この遺跡は、弥生時代後期から晩期にかけての5つの墳丘墓から構成されており、特に1号墓は多くの貴重な出土品で注目を集めています。

発見と調査

平原遺跡の発見は、1965年1月にミカン畑の開墾中に偶然1号墓が発見されたことから始まりました。原田大六氏を中心とした学術調査が行われ、1988年から1999年にかけて周辺地域の発掘調査が進められた結果、最終的に5基の墳丘墓が確認されました。現在、1号墓のみが復元され、平原歴史公園として整備・管理されています。

1号墓の特筆すべき出土品

1号墓からは、直径46.5cmの大型内行花文鏡を含む計40面の銅鏡をはじめ、メノウ製の管玉、ガラス製の勾玉や丸玉、管玉、連玉など、多数の副葬品が出土しました。これらの出土品は全て「福岡県平原方形周溝墓出土品」として、2006年に国宝に指定されています。出土品は現在、文化庁が所有し、伊都国歴史博物館で保管されています。

1号墓の詳細

1号墓は方形周溝墓であり、内部には割竹形木棺が埋葬されていたことが確認されています。特筆すべきは、副葬された多数の銅鏡の存在です。日本製と中国製の銅鏡の破片が多数発見され、その破片を復元した結果、39面分の銅鏡が確認されました。しかし、その後の調査で、大型内行花文鏡の破片が実は5面分である可能性が指摘され、最終的には40面分の銅鏡が確認されています。これは、一つの墳墓から出土した銅鏡の数としては日本最多となります。

大型内行花文鏡の直径は46.5cmで、これは鏡の円周の単位で八咫に相当し、八咫鏡と同じ大きさであると考えられています。発掘調査責任者の原田大六氏によれば、これらの銅鏡は人為的に破砕されたものではないと報告されています。

主な出土品リスト

1号墓からは、以下の主な出土品が見つかっています。

大型内行花文鏡: 5面（別名「内行花文八葉鏡」）
内行花文鏡: 2面
方格規矩鏡: 32面
四螭文鏡: 1面
メノウ製管玉: 12個
ガラス製勾玉: 3個
ガラス丸玉: 約500個
ガラス小玉: 約500個
ガラス管玉: 約30個
ガラス連玉: 約900個
耳璫: 3破片
素環頭大刀: 1

これらの出土品は、国宝「福岡県平原方形周溝墓出土品」として一括指定されており、土器残欠、ガラス小玉、鉄鏃なども含まれています。

考古学的な考察

原田大六氏は、1号墓から出土した大型内行花文鏡を「八咫鏡」と同一視し、伊勢神宮の八咫鏡も元々は同型の鏡であった可能性を指摘しました。また、1号墓の東南に位置する縦穴については、湧水の存在から井戸と報告されていましたが、後の研究では大柱跡である可能性が指摘され、太陽信仰との関連が示唆されています。さらに、墓壙周辺の柱穴の遺構については、殯宮に関連する建築物の遺構である可能性が指摘されています。

被葬者に関する考察

1号墓からは武器類が少ないことから、被葬者は女性であると考えられています。発掘調査では被葬者を特定する直接的な資料は得られていませんが、遺構や出土品から複数の説が提唱されています。

1. 天照大神のモデル説: 原田大六氏は、出土した鏡や殯宮の存在から、被葬者を玉依姫命とし、それが天照大神であるという説を唱えました。
2. 卑弥呼説: 邪馬台国九州説を支持する研究者は、1号墓が同時期の墳墓の中で最多の銅鏡を出土している点に着目し、卑弥呼の墓である可能性を指摘しました。

所在地とアクセス

平原遺跡は、福岡県糸島市有田の平原歴史公園内に位置しています。JR筑前前原駅や波多江駅から糸島市コミュニティバスに乗り、「平原古墳入口」で下車すると、徒歩2分で到着します。

行事・祭

毎年10月20日には、照富神社で「大日孁貴尊の鎮魂祭」が開催されます。また、10月中旬から下旬にかけては、地元主催の「平原王墓祭り」が行われています。