大宇陀町

大宇陀町

大宇陀町（おおうだちょう）は、かつて奈良県宇陀郡に存在した自治体です。2006年（平成18年）1月1日、隣接する菟田野町、榛原町、室生村と合併し、新たに宇陀市が発足したことにより、その歴史に幕を閉じました。合併後、2011年（平成23年）3月までの期間は、宇陀市の地域自治区である「大宇陀区」としてその名を残していました。

地理

奈良県の東北部、大和高原の南端に位置し、宇陀川が流れる盆地に市街地が広がっていました。周囲は標高の高い竜門山地の山々や丘陵に囲まれ、大部分が山林で、谷地は田畑として利用され、市街地は川沿いの比較的狭い平地に発展しました。町の中核部には城山（標高471メートル）が特徴的です。水系は主に淀川水系（宇陀川）ですが、南部の旧上龍門村の一部は紀の川水系（津風呂川）に属していました。

交通

主要な交通路は、町を南北に縦断する国道370号と、中心部で交差する国道166号、そしていくつかの県道でした。町内に鉄道路線や駅はなく、鉄道を利用する際の最寄り駅は、北方にある近鉄大阪線の榛原駅でした。

歴史

この地域は古くから開け、古代には「阿騎野」と呼ばれ、天皇家の狩猟地として利用されました。万葉歌人・柿本人麻呂がこの地の情景を詠んだ歌は特に有名です。延喜式に記載される阿紀神社も鎮座しています。『日本書紀』では「菟田野」として登場し、古くから薬草の採取や栽培、生薬の製造が盛んに行われ、その伝統は江戸時代まで続きました。この歴史は、現代の「薬の館」（宇陀市歴史文化館）などで紹介されています。中世は地元の有力者である秋山氏が治めましたが、その後支配者がたびたび変わり、江戸時代の17世紀には織田家が城主を務める松山藩の城下町として栄えました。織田家転封後は幕府の直轄領となり、明治時代を迎えました。

年表

1942年（昭和17年）2月11日 - 宇陀郡松山町、神戸村、政始村と吉野郡上龍門村が合併し、大宇陀町が誕生。
2006年（平成18年）1月1日 - 菟田野町、榛原町、室生村と合併して宇陀市が発足。同日をもって大宇陀町は廃止。

名所・旧跡・観光スポット

大宇陀町には、歴史的な名所や美しい自然景観が数多く残されています。旧城下町の町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区「宇陀市松山」として選定されており、往時の雰囲気を伝えています。日本最古の民間薬草園とされる国史跡「森野旧薬園」や、国史跡の「宇陀松山城跡」もあります。その他にも、本堂が県指定重要文化財である万法寺、県指定重要文化財の山邊家住宅、山門が県指定重要文化財の光明寺、樹齢約300年とされる見事な一本桜「本郷の瀧桜（又兵衛桜）」、柿本人麻呂の歌碑が立つ「阿騎野・人麻呂公園」、県社である阿紀神社などが著名です。

その他

かつては兵庫県氷上郡柏原町（現在の丹波市）と姉妹都市提携を結んでいました。教育機関としては、奈良県立大宇陀高等学校をはじめとする複数の学校が置かれていました。畜産技術センターなどの施設もあり、実業家の藤田浩之氏、作曲家・シンセサイザー奏者の東祥高氏らが当地出身者です。

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