大宮総合車両センター東大宮センター

概要

埼玉県さいたま市に広がる大宮総合車両センター東大宮センターは、JR東日本が管轄する車両基地の一つです。首都圏本部の大宮総合車両センター車両検査科の下部組織として位置づけられており、主に特急形電車を扱っています。所在地はさいたま市北区本郷町を代表としつつ、土呂町や見沼区の一部にもまたがっています。

このセンターは、省令上の技術基準における「停車場」（操車場）である東大宮操車場の構内に設けられています。ただし、東大宮操車場自体は当センターとは別の組織であり、JR東日本大宮支社大宮統括センターが管理する現業機関として、回送線の運行管理や構内での操車・信号制御を担っています。

当センターの前身は、1969年4月に設立された尾久客車区東大宮派出所です。当初は優等列車の整備や滞泊を行うほか、東北線・高崎線の中距離電車の拠点として利用されましたが、開業時は車両を配置しない基地でした。時代を経て、2006年3月に車両配置区所となり、特に特急形車両を専門に扱う基地へと変化しました。2021年3月以降は、JRグループ全体で見ても、特急形車両のみを専門とする唯一の車両基地となっています。

当センターへの列車の出入りは、宇都宮線本線から直接ではなく、大宮駅構内から分岐する単線の回送線を経由して行われます。この回送線は土呂駅の先で本線から離れていきます。大宮駅の地上ホーム（7番線を除く）では東京・新宿方面への折り返しが難しいため、「成田エクスプレス」や武蔵野線直通の「むさしの号」「しもうさ号」、臨時列車などが大宮駅で終着となった後、この回送線を通って東大宮センターへ回送され、ここで折り返し準備を行います。

設備と業務

センターの敷地内には、車両を収容するための様々な設備が整っています。具体的には、列車の出入りに使われる着発線が3線、洗浄作業を行う洗浄線が4線、車両の入換等に使われる引上線が4線、そして車両の留置に使用される収容線が19線設けられています。特に収容線の一部は二つの区画に分かれており、それぞれ15両編成に対応できる長い有効長を持っています。通常、着発線に近い区画には日常運用や臨時列車に使用される車両が、奥の区画には長期留置や改造、廃車予定車両などが置かれることが多く、過去には他所の車両が一時的に留置されたこともあります。2013年3月には検修棟が新たに建設され、構内配線の一部が変更されました。

当センターで実施される業務は多岐にわたります。配置されている車両の機能保全検査（交番検査）や日常的な仕業検査、異常発生時の対応、車両の清掃、そして列車の折り返し準備や東大宮操車場構内での車両入換作業などが、大宮総合車両センター車両検査科の指揮のもとで行われています。

構内の南東側には、JR東日本の首都圏本部や大宮支社に勤務する駅員、運転士、技術員などが実地訓練を行うための総合訓練施設、「東京・大宮総合訓練センター」が併設されています。

配置車両

2023年4月1日現在、当センターには以下の特急形電車が配置されています。

185系電車 (12両)
定期運用は終了していますが、現在も一部編成が団体臨時列車を中心に活躍しています。かつては「踊り子」や「湘南ライナー」などで首都圏の列車を支え、様々な塗色や編成組成の変遷を経てきました。JRの特急形車両としては古い部類に入りますが、その独特の存在感を放っています。

253系電車 (12両)
元「成田エクスプレス」用の253系から改造された1000番台が2編成配置されています。東武鉄道との直通運転に対応しており、特急「日光」「きぬがわ」として運用されています。

E257系電車 (189両)
当センターにおける最新・最大の勢力です。松本車両センターや幕張車両センターから改造の上転入しました。主に特急「踊り子」「湘南」として185系などを置き換えたほか、「草津・四万」などにも投入され、現在の主力として首都圏の特急ネットワークを支えています。様々な番台区分が存在し、用途に応じて使い分けられています。

E261系電車 (16両)
全席グリーン車以上の新しいリゾート特急「サフィール踊り子」専用車両です。8両編成が2本配置されており、伊豆方面への観光輸送を担っています。

651系電車 (1両)
かつて特急「草津」「あかぎ」などで活躍しましたが、現在はクハ651形1両のみが訓練用として残存しています。

過去の配置車両

183系・189系
過去には小山車両センターや高崎車両センター、田町車両センターから転入した編成が配置されていました。定期運用は持たず、年末年始の臨時列車や「ホリデー快速富士山」、「ムーンライトながら」など、様々な臨時列車や波動輸送で運用されましたが、その後廃車や他所への転属が進み、配置がなくなりました。

* 251系
特急「スーパービュー踊り子」専用として活躍した車両で、田町車両センターから転入し、同列車を中心に運用されていました。2020年3月のダイヤ改正で「スーパービュー踊り子」が運行を終了したことに伴い運用を離脱し、全編成が廃車となりました。

東京・大宮総合訓練センター

東大宮操車場構内の南東エリアには、JR東日本の駅員、運転士、保安要員など、現業部門の社員が実際の設備を用いた訓練を行うための「東京・大宮総合訓練センター」が設けられています。

この施設には、全長660mの訓練線が敷設されており、複線と単線の線路、分岐器、そして「青葉駅」「山彦駅」「朝日駅」（新幹線列車名に由来）という名の訓練用駅設備、さらに信号設備などが設置されています。建屋内には運転シミュレーターも備えられており、様々な状況を想定した実践的な訓練が可能です。

訓練線で使用される車両は専用に改造されたものが使用されており、初代の101系、2代目の103系を経て、2008年からは3代目として209系電車を改造した2両編成の訓練車が導入されました。この3代目訓練車は湘南色の帯をまとっていました。2018年からは、元八高・川越線用の209系3000番台を改造した車両が4代目として使用されています。また、センターの端部には事業用車のクモヤ143形やクモユニ143形、貨車であるホキなども留置されています。

沿革

大宮総合車両センター東大宮センターの歴史は、国鉄時代の1969年 4月25日に、尾久客車区の派出所として暫定的に開設されたことに始まります。これは、1968年のダイヤ改正に向けた首都圏北部での輸送力増強に対応するため、尾久客車操車場の能力不足を補う滞泊基地として計画されたためでした。当初は車両無配置で、優等列車の整備や中距離電車の拠点として使用されました。1972年には大宮駅からの単線回送線が使用開始され、1973年 7月には全面的な使用が始まりました。東大宮操車場もこの時に停車場として開設されました。

国鉄分割民営化後、2001年4月の大宮支社設立に伴い、組織の管轄が小山電車区へと変更され、小山電車区東大宮派出所となりました。その後、2004年6月には小山車両センターの改称に伴い、小山車両センター東大宮派出所と改称されました。2006年3月には再び組織が変更され、大宮総合車両センターの下部組織である東大宮センターとなり、これに合わせて小山車両センターや高崎車両センターから一部の車両が転入し、車両配置が開始されました。これにより、他の車両基地と同様に車両の検査や管理業務を行うようになりました。

特に2013年 3月16日には、田町車両センターの廃止に伴い、多数の185系や251系が転入し、185系はこの時をもって全編成が当センターに集約されました。その後も車両の入換や廃車が進み、特急形専門基地としての性格がより明確になりました。

近年の組織再編により、2022年10月には大宮総合車両センター自体が首都圏本部の管轄となり、2024年3月には東大宮操車場が大宮支社大宮統括センターの管轄となるなど、その組織上の位置づけにも変化がありました。

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