大山朝常

大山朝常：激動の沖縄を駆け抜けた政治家

大山朝常（おおやま ちょうじょう、1901年12月25日 - 1999年11月24日）は、琉球政府および沖縄県の政治家です。彼は、戦後の沖縄において、政治、行政の両面で重要な役割を果たし、現在の沖縄市の基礎を築いた人物として知られています。沖縄社会大衆党の結党メンバーであり、沖縄の本土復帰運動のリーダーとして活躍した一方で、晩年には沖縄独立を主張するという、複雑な思想遍歴をたどりました。

生い立ちと教育

1901年、大山は沖縄県中頭郡越来村（現：沖縄市）に次男として生まれました。戸籍上の名前は「朝常」ですが、琉球名では「加那覇（カナーッチー）」と呼ばれていました。1918年に沖縄県立農林学校に入学し、1921年に卒業。その後、代用教員を経て、近衛歩兵第3連隊に入営しますが、隊内での差別的な扱いに遭い、1年余りで除隊。1922年には沖縄県師範学校に入学しました。

教員時代と沖縄戦

1925年、沖縄県師範学校を卒業後、国頭郡の小学校訓導となり、いくつかの小学校で教鞭を執りました。1941年には安波国民学校の訓導兼校長、1943年には故郷の越来村青年学校の教諭兼校長に就任。沖縄戦では、3人の子供、母親、兄を失うという悲劇に見舞われました。終戦後は、他の沖縄の人々と同じように収容所での生活を余儀なくされ、死体収容作業や食料配給に従事。その後、先輩教員の要請で教職に復帰し、1945年12月には胡差市の室川初頭学校の校長に就任。1947年には新設された越来実業高等学校の校長となりました。

立法院議員時代

教育畑を歩んできた大山は、沖縄民政府の文教部視学官に任命されました。1950年に沖縄民政府が廃止されると、沖縄群島政府の工務部海運課長に転じました。同年の沖縄群島議会議員選挙では落選しましたが、沖縄社会大衆党の結党に参加。1954年の立法院議員選挙で初当選を果たし、1956年に再選。しかし、1958年の選挙では民主主義擁護連絡協議会（民連）の勢いに押され、落選しました。

コザ市長時代

1956年、大山の出身地である越来村が市制施行し、コザ市となりました。1958年、大山は「基地依存経済からの脱却・祖国復帰」を掲げ、コザ市長選挙に立候補し、当選。以後、4期16年にわたり市長を務めました。市長として、上下水道や道路の整備、体育館や野球場などの公共施設の建設に力を注ぎ、コザ市のインフラ整備に大きく貢献しました。特に1970年のコザ暴動では、基地経済からの脱却を訴える一方で、混乱の収束にも尽力しました。また、基地依存からの脱却を目指し、コザ市と美里村の合併を推進。1974年には沖縄市が誕生し、大山は初代市長の座を町田宗徳に譲り、退任しました。

国政進出の模索と晩年

1977年、沖縄社会大衆党から衆議院への出馬要請がありましたが、固辞。1978年には参議院への出馬を検討しましたが、革新政党からの批判や沖縄県知事の同意が得られず、断念。その後、沖縄社会大衆党を離党し、沖縄県社会民主連合を立ち上げました。晩年には沖縄国際大学の理事などを務め、1997年に『沖縄独立宣言』を出版。1999年11月24日、生涯を終えました。

大山朝常の人物像

大山は、几帳面で時間厳守の人として知られており、コザ市長時代は職員よりも早く出勤し、遅くまで残業するなど、率先垂範の姿勢を貫きました。また、メモ魔としても知られ、アメリカ人との交渉の際には、丁寧にメモを取り、交渉を有利に進めるために活用しました。

アメリカ民政府との関係

大山は、基地経済からの脱却を主張しながらも、コザ市の発展のためには、アメリカ軍からの援助を最大限に引き出すという、複雑な立場にありました。アメリカ民政府は、大山の言動を監視し、再三警告を与えていましたが、大山は、アメリカ軍からの支援を最大限に活用し、コザ市の発展に尽力しました。

評価

大山は、コザ市の基礎を築いた人物として高く評価されており、その業績は、道路や上下水道の整備、区画整理事業など、具体的な形で残っています。また、基地依存経済からの脱却を訴えながらも、現実的な政策を推進し、コザ市の発展に貢献しました。一方で、革新派でありながら、保守派とも連携する姿勢は、他の革新派から批判を受けることもありました。

沖縄独立論

晩年の大山は、日本からの独立を主張した『沖縄独立宣言』を出版し、大きな話題を呼びました。これは、本土復帰運動を主導した大山が、沖縄独立論に転向したことを意味します。この思想転換について、大山は、沖縄が、日本やアメリカから、蔑ろに扱われているという認識が根底にあったと述べています。また、孫の玉城満は、本土復帰後、沖縄に投入された予算が、沖縄を素通りして本土に持ち去られるという現実を目の当たりにしたことが、大山の思想転換につながったと推測しています。大山の独立論は、沖縄の現状に対する強い批判精神の表れであり、その思想は、今もなお、沖縄の人々に影響を与え続けています。

大山朝常は、沖縄の激動の時代を駆け抜けた政治家として、その功績と生き様は、今後も語り継がれていくでしょう。

もう一度検索