大島河内本源氏物語

大島河内本源氏物語：河内本系統の貴重な写本

大島河内本源氏物語は、中京大学が所蔵する源氏物語の写本です。その歴史と学術的な意義について解説します。

由来と特徴

この写本は、昭和初期に実業家・大島雅太郎氏のコレクションに含まれていました。大島雅太郎氏が所有していたことから「大島本」と呼ばれ、『校異源氏物語』や『源氏物語大成』にも、河内本系統の写本として採用されています。しかし、「大島本」という名称は、古代学協会所蔵の青表紙本系統の写本を指すことが多いため、河内本系統である本写本を区別するために「大島河内本」と呼ばれることが多いです。

写本はほぼ全帖が南北朝時代以前の書写と推定され、補筆部分も同時代のものと考えられます。本文は、河内本系統に属し、特に天理図書館所蔵の「天理河内本」に近い特徴を持っています。

大島雅太郎氏の没後、コレクションは小汀利得氏を経て、1980年に中京大学図書館に所蔵されることとなりました。そのため、「中京大学本」と呼ばれることもあります。なお、中京大学には本写本以外にも、源氏物語の写本が複数所蔵されています。

『校本源氏物語』における役割

池田亀鑑は、『校本源氏物語』の編纂において、初期段階で河内本系統の写本を底本として使用していました。この初期の底本として、大島河内本が有力視されています。池田亀鑑の弟である池田晧の証言や、関連資料から、天理河内本が初期の底本であった可能性が高いとされています。しかし、底本の変更があった可能性も示唆されており、大島河内本が『校本源氏物語』の編纂にどのように関わっていたのかは、未だ解明されていない部分も多いです。研究者によっては、大島河内本が天理河内本と青表紙本の大島本の中間段階の底本であった可能性も指摘されています。

翻刻と公開

大島河内本の価値を広く知らしめるため、2008年より中京大学の紀要において翻刻作業が開始され、順次公開されています。複数の研究者によって、複数の巻が翻刻されており、学術的な研究に活用されています。現在までに、桐壺、空蝉、若紫、末摘花など、複数の帖が公開されています。翻刻作業は、源氏物語研究に重要な貢献をするものと期待されています。

まとめ

大島河内本源氏物語は、河内本系統を代表する貴重な写本であり、源氏物語研究において重要な資料です。その成立過程や『校本源氏物語』への関与など、解明すべき点は残っていますが、中京大学による翻刻の進展により、今後さらに研究が深まることが期待されます。この写本の存在は、源氏物語のテキスト史を理解する上で不可欠な要素であり、今後も多くの研究者によって詳細な分析が続けられるでしょう。

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