大成丸 (初代)

大成丸（たいせいまる）とは

大成丸は、日本の航海練習船の一つで、1904年に建造された初代の艦船です。その歴史は1897年に建造された日本初の大型練習船、月島丸の喪失を受けて始まりました。月島丸は、太平洋を往復する偉業を達成したものの、1900年に台風に遭遇し、悲惨な遭難事故が発生しました。123名の命が失われたこの出来事は、日本にとって深い衝撃を与え、大成丸の建造に至ったのです。

船歴の始まり

大成丸は、補助機関を備えた大型帆船として、川崎造船所神戸工場で起工され、1903年12月2日に進水しました。日露戦争が勃発した年に完成した本船は、すぐに海軍に徴用され、帆装を取り外して輸送船としての役割を果たしました。その後、帆装が復旧され、1906年10月には初の遠洋航海を成功裏に行いました。

世界一周航海の記録

1910年10月26日、本船は第6次遠洋航海として横浜港から東回りでの世界一周に出発しました。実習生94名を含む154名が乗船し、出発直前には逓信大臣の後藤新平が来船して訓示を行いました。航海は、フランス領タヒチ、フォークランド諸島、ケープタウン、メルボルンを経由し、厳しい暴風にも直面しながら、307日間、約56,300kmを航行し、1911年8月25日に横浜港に無事帰港しました。

1912年7月上旬、大成丸は再び東回りでの世界一周航海に出発しました。実習生125名を含む180名が乗船し、サンディエゴ、ケープタウン、セントヘレナ、リオデジャネイロ、フリーマントルを経て帰港する船旅となりました。しかし、この航海は明治天皇の崩御の訃報もあり、さらには船長の急な下船、無風、荒天といった困難が続きました。父が亡くなったことで精神的にも厳しい状況となり、南インド洋では、一か月以上も晴れない日が続き、70名以上が脚気を発症し、2名の学生と1名の大工が病死する惨事が起こりました。この航海は456日を要し、約36,377海里を航行した後、1913年12月中旬に無事帰港しました。

なお、この航海に参加していた米窪満亮は、後に初の労働大臣となり、その体験を回想して「大成丸世界周遊記」を連載し、夏目漱石から推薦を受けました。この作品は後に『海のロマンス』として出版され、大ヒットを記録し、多くの学生の志願者を増やす一因となりました。

終焉とその後

大成丸は1940年10月11日、横浜港沖で紀元二千六百年特別観艦式に参加した後、1941年に再び海軍に徴用され、輸送船として石炭輸送に従事しました。無事に終戦を迎えましたが、1945年10月9日には神戸港内でアメリカ軍の残存機雷に触れ沈没する悲劇が起き、実習生31名が命を落としました。

その就航から沈没までの間、大成丸は約630,000海里を航行し、63回の遠洋航海を完遂しました。また、2,330名（延べ8,873名）の実習生が乗船し、彼らの航海経験は貴重な財産となりました。沈没後、本船の名前入り銘鈑は保存され、1954年に就役した2代目大成丸の船内に展示され、2014年に就役した4代目大成丸にも引き継がれています。

船の設計

大成丸は、4本のマストを持つバーグ型帆船で、総帆数は26枚に及びました。これにより、操縦性と帆走性能を高め、特に遠洋航海において優れた能力を発揮しました。

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