大明神城

大明神城（だいみょうじんじょう）

大明神城は、現在の宮崎県えびの市大明司に位置していた砦で、戦国時代には重要な役割を果たした山城です。別名として小城、または大明司塁とも呼ばれており、『飯野古事記』には山城としての記述が見られます。この城は、標高285m、比高54mの狭い尾根に築かれ、その地形を活かした要害堅固な構造が特徴です。

立地と構造

城は、東西に細長く伸びた丘陵地に位置しており、周囲は急峻な崖に囲まれています。シラス土壌の丘陵という地形も、防御力を高める要素となっています。主郭は東西約200mに及び、肥後街道を見下ろすように配置されています。この立地は、交通の要衝を抑える上で重要な意味を持っていました。周辺の宮之城や掃部城と同様に、飯野城と加久藤城を結ぶ連絡路上に位置し、戦略的に重要な場所であったと考えられます。

歴史

築城主など詳しい情報は不明ですが、『真幸院記』には、もともと北原氏の城であったと記されています。永禄5年（1562年）、北原氏が伊東氏に領地を奪われた際、島津貴久・相良義陽・北郷時久の三者は北原氏を支援する約束を結びました。しかし、翌永禄6年（1563年）には、相良義陽が裏切り、伊東氏がこの城を攻め落とす際に協力したため、島津氏と相良氏の関係は悪化しました。この出来事は、両氏の対立を決定的なものにした出来事として知られています。

その後、大明神城は島津氏の支配下に戻ったとされています。永禄11年（1568年）には、相良氏が伊東氏と連携し、島津義弘の居城である飯野城を攻めようとしましたが、島津勢はこの城で相良勢の進軍を食い止めました。このように、大明神城は、戦国時代の激しい戦乱の中で、重要な役割を果たしました。

城内には、島津忠恒の産土神である「大戸諏訪大明神」が祀られており、現在では大明司諏訪神社として知られています。このことから、城が単なる軍事施設だけでなく、地域住民の信仰の中心でもあったことが窺えます。

まとめ

大明神城は、その立地や構造から、戦国時代の軍事的な重要性が高い城であったと考えられます。特に、島津氏と相良氏の対立における戦略的な拠点としての役割が大きく、その歴史は、当時の複雑な政治情勢を反映しています。現在では城郭としての遺構は残っていませんが、その歴史は後世に語り継がれています。

参考文献

『えびの市の城館跡』：宮崎県えびの市教育委員会
『えびの市史　上巻』：えびの市郷土史編さん委員会
『三俣院記 真幸院記 甑島諏訪神社御神事由緒』 鹿児島県史料拾遺(9) （鹿児島県史料拾遺刊行会）
『日向記』

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