大智

大智

大智（だいち）は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて活躍した曹洞宗の僧侶です。肥後国（現在の熊本県）の出身で、大智祖継（だいちそけい）とも呼ばれます。一般には大智禅師の名で広く知られています。

略歴

大智は、肥後国宇土郡長崎（現在の熊本県宇城市不知火町）で生まれました。幼名は萬仲（まんちゅう）と名付けられました。7歳の時、大慈寺の寒巌義尹（かんがんぎいん）に師事し、禅の道を歩み始めます。寒巌義尹の没後、鎌倉の建長寺、京都の法観寺、加賀の大乗寺などを訪れ、修行を重ねました。

正和3年（1314年）には、中国（元）に渡り、古林清茂（こりんせいも）、雲外雲岫（うんがいうんしゅう）らに師事し、さらに禅の修行に励みました。正中元年（1324年）に日本に帰国すると、瑩山紹瑾（けいざんしょうきん）の指示により、明峰素哲（みんぽうそてつ）のもとで参禅しました。

その後、加賀国に祇陀寺（ぎだじ）を開創し、さらに肥後国に聖護寺（しょうごじ）を開創しました。また、肥後の有力豪族である菊池氏の帰依を受け、廣福寺（こうふくじ）を創建し、菊池氏一族に大きな精神的影響を与えました。

正平8年/文和2年（1353年）には、有馬澄世（ありますみよ）の招きにより肥前国加津佐（現在の長崎県南島原市加津佐町）に赴き、水月山円通寺（すいげつざんえんつうじ）を創建しました。正平21年/貞治5年12月10日（1367年1月10日）、同地で生涯を閉じました。

法名の由来の伝説

大智という法名には、次のような伝説が残されています。

7歳の萬仲が、肥後大慈寺の寒巌義尹に弟子入りすることになった際、寒巌が年齢を尋ねると、萬仲は「萬仲と申します。齢七つになります」と答えました。すると寒巌は、手元の饅頭を勧めました。饅頭を食べる萬仲の姿を見て、寒巌は「萬仲が饅頭を食べるとは、いかなる心地か」と問いかけました。萬仲は落ち着いて「大蛇が小蛇を食らうようなものです」と答えました。

その答えに感心した寒巌は、大慈寺の傍を流れる緑川を指差し、「この川は川舟の往来が激しく騒がしい。この場で舟の往来をとめて見せよ」と言いました。萬仲は座を立ち、川を望む側の障子を閉めて座に戻り、「これで舟はとまりました」と言いました。「ならば、その場を動かずにとめて見せよ」と寒巌が言うと、萬仲は黙って目を閉じました。

7歳にして深い智慧を持つ萬仲に感心した寒巌は、「なかなか知恵の回る小僧だ、出家したら小智（しょうち）と名乗るがよかろう」と言いました。すると萬仲は「いやでございます」と答えました。「何故じゃ」と寒巌が問うと、萬仲は「小智は菩提の障りとなります」と答えました。寒巌は笑い、彼を大智（だいち）と名付けたと言われています。

参考文献

飯田利行編訳『懐奘・大智』（現代語訳洞門禅文学集、国書刊行会、2001年）
水野弥穂子編著『大智 偈頌・十二時法語・仮名法語』（禅入門6：講談社、1994年）
不知火町史編さん委員会編纂『不知火町史』（不知火町、1972年）
「きくち広報271号」（菊池市、1979年11月）

外部リンク

* 「少林寺の秘話」全日本少林寺気功協会 大智禅師について

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