建長寺

建長寺：古都鎌倉を代表する禅宗寺院

建長寺は、神奈川県鎌倉市山ノ内にある臨済宗建長寺派の大本山です。正式名称を「巨福山建長興国禅寺」といい、鎌倉五山の第一位に列せられる名刹です。鎌倉幕府第5代執権・北条時頼が創建し、南宋から渡来した禅僧・蘭渓道隆を開山として迎えました。

歴史

創建

建長寺は、建長5年（1253年）に落慶供養が行われました。創建を主導した北条時頼は熱心な仏教信者であり、特に禅宗に深く帰依していました。当時の日本は、承久の乱を経て鎌倉幕府が政治の実権を握り、鎌倉が事実上の首都となっていた時代でした。

建長寺の伽藍は、中国式の配置を基調としています。創建当初、この地は「地獄ヶ谷」と呼ばれる処刑場でしたが、地蔵[[菩薩]]を本尊とする心平寺という寺院が存在していました。そのため、建長寺の本尊も釈迦如来ではなく地蔵[[菩薩]]となっています。現在も心平寺の旧本尊とされる地蔵[[菩薩]]像が建長寺に伝えられています。

初代住職の蘭渓道隆は、中国・宋末の禅僧で、厳格な禅風を日本に伝えました。彼は建長寺が創建されるまで常楽寺に住み、建長寺の住持となった後も、その禅風は寺内に深く根付きました。

その後

建長寺は、創建以降も度重なる災害に見舞われました。特に、鎌倉大地震や数々の火災で創建当初の建物の多くが失われましたが、その都度再建されてきました。鎌倉時代末期には、寺の修復費用を工面するため、幕府公認で貿易船が派遣されたこともあります。江戸時代には徳川家の援助を受け、主要な建物が新築または移築されましたが、関東大震災でも大きな被害を受けました。

伽藍

創建当時の建物は失われていますが、総門、山門、仏殿、法堂、方丈が一直線に並ぶ伽藍配置は、創建当時の面影を今に伝えています。特に、総門から山門への参道が地形の関係で斜めになっているのが特徴的です。

総門

天明3年（1783年）に建立された総門は、京都の般舟三昧院から移築されたものです。「巨福山」の額は、建長寺10世住持の一山一寧の筆とされています。額の「巨」の字には、安定感を増すために余分な点が加えられています。

山門（三門）

安永4年（1775年）に上棟した山門は、2005年に重要文化財に指定されました。三間一戸の二重門で、禅宗様式の特徴を備えています。下層は吹き放しで、柱や梁などの部材が太く豪快な印象を与えます。上層には宝冠釈迦如来像や羅漢像が安置されていますが、通常は非公開です。

仏殿

重要文化財に指定されている仏殿は、芝の増上寺にあった徳川秀忠夫人・崇源院の霊屋を移築したものです。そのため、屋根や天井の形式が一般的な禅宗の仏殿とは異なっています。内部には本尊の地蔵[[菩薩]]坐像や千体地蔵[[菩薩]]立像などが安置されています。堂前には、開山・蘭渓道隆手植えと伝わる樹齢約750年のビャクシンの古木がそびえ立っています。

法堂

禅宗以外の寺院の講堂に相当する法堂は、文化11年（1814年）に上棟しました。鎌倉最大級の木造建築として、2005年に重要文化財に指定されています。内部には本尊の千手観音坐像が安置されており、天井には小泉淳作筆の雲龍図が描かれています。また、愛知万博で展示された釈迦苦行像のレプリカが安置されています。

唐門

重要文化財に指定されている唐門は、方丈の入口にあります。仏殿と同じく、徳川秀忠夫人・崇源院の霊屋から移築されたものです。2011年に大規模な修理が完了し、移築当時の姿が再現されました。

方丈

方丈は「竜王殿」とも呼ばれ、総門と同じく京都の般舟三昧院から移築されたものです。庭園は夢窓疎石の作と伝えられています。

その他

境内には、華厳塔の跡や建長寺の鎮守である半僧坊、河村瑞賢や織田長益（有楽斎）の墓などがあります。特に、半僧坊への石段の途中には天狗の像が並び、独特の雰囲気を醸し出しています。

塔頭

建長寺には、最盛期には49か院もの塔頭がありましたが、現在は12か院を残すのみとなっています。これらの塔頭は、開山や歴代住職の墓所を守るために建てられた小寺院です。現在、一般公開されているのは、円応寺（新居閻魔堂）のみで、長寿寺は期間限定で公開、妙高院と龍峰院は巡礼者のみが入ることができます。

西来庵は開山・蘭渓道隆の墓塔を守る塔頭で、妙高院は鎌倉三十三観音霊場27番札所、龍峰院は同29番札所です。その他、同契院、宝珠院、天源院、正統院、回春院などがあります。

文化財

建長寺には、多くの文化財が伝わっています。国宝としては、蘭渓道隆の肖像画「絹本淡彩蘭渓道隆像」や、蘭渓道隆自筆の「大覚禅師墨蹟 法語規則」、創建当時の梵鐘などがあります。重要文化財としては、山門、仏殿、法堂、唐門などの建造物の他、多くの仏像や絵画、書跡などが指定されています。これらの文化財は、通常は鎌倉国宝館に寄託されており、同館での展示や宝物風入れの際に公開されます。

境内および庭園

境内は、1966年に国の史跡に指定され、庭園は1932年に国の史跡および名勝に指定されています。庭園は、仏殿前のビャクシンの植栽と、方丈裏の庭園が含まれています。これらの美しい庭園は、建長寺の歴史と文化を象徴する重要な要素となっています。

拝観

建長寺は、年間約50万人の参拝者や観光客が訪れる人気の観光スポットです。拝観料は大人500円、子供200円です。ただし、坐禅修行を行う僧坊などは拝観対象外となっています。

宗学林と関連エピソード

建長寺は、1886年に修行僧学校である宗学林を設立しました。この宗学林は、現在の鎌倉学園中学校・高等学校の前身となっています。また、同校の出身者である桑田佳祐が所属するサザンオールスターズが、2003年に境内でスペシャルライブを行い、山門がステージとして使用されたことは、ファンの間では有名なエピソードです。

交通

建長寺へのアクセスは、JR横須賀線北鎌倉駅から徒歩20分、または江ノ電バスで3分です。鎌倉駅からも徒歩30分程度でアクセス可能です。バスは渋滞しやすいので注意が必要です。また、境内からはハイキングコースも繋がっており、鎌倉市内の瑞泉寺や横浜市の円海山方面へ足を伸ばすこともできます。


建長寺は、禅宗の歴史と文化を今に伝える貴重な寺院です。鎌倉を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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