大木式土器

大木式土器：東北地方の縄文文化を彩る土器様式

大木式土器は、縄文時代前期前葉から中期末葉にかけて、東北地方を中心に分布した土器の型式です。考古学者の山内清男によって定義され、宮城県宮城郡七ヶ浜町に位置する大木囲貝塚が、その代表的な遺跡（標式遺跡）として知られています。

大木式土器の変遷

大木式土器は、その様式変遷から1式から10式に細分されます。1式から6式までが縄文時代前期に分類され、7a式以降は縄文時代中期に属します。この分類は、土器の形状、文様、製作技法などの変化に基づいて行われ、各時期の土器の特徴を把握する上で重要な指標となっています。

分布域の変遷

縄文時代前期から中期中葉にかけて、大木式土器は概ね秋田市・田沢湖・盛岡市・宮古市を結ぶライン以南の東北地方南部を主な分布域としていました。この時期、東北地方北部から北海道南西部にかけては、同時期の円筒土器が分布しており、大木式土器と円筒土器は、それぞれの地域で独自の文化圏を形成していました。

しかし、縄文時代中期後半に入ると、大木式土器の分布域は北東北へと拡大します。この分布域の拡大は、当時の人々の交流や文化的な影響力の拡大を示唆するものと考えられています。ただし、北海道には大木式土器は分布していません。

大木式土器の特徴

大木式土器は、その形状や文様において、様々な特徴が見られます。初期の土器は、比較的シンプルな形状で、縄文や貝殻文などの素朴な文様が施されています。しかし、時代が進むにつれて、土器の形状は複雑化し、文様も多様化していきます。特に、縄文時代中期には、口縁部に装飾が施されたり、立体的な文様が表現されたりするようになります。

また、縄文時代中期後葉には、竪穴建物内に複式炉という独特の石組炉を伴うことも、大木式土器文化の特徴として挙げられます。この複式炉は、煮炊きや暖房など、様々な用途に用いられたと考えられています。

大木式土器研究の意義

大木式土器は、東北地方の縄文文化を理解する上で、非常に重要な資料です。土器の形状や文様、分布域の変遷などを分析することで、当時の人々の生活様式や文化交流、社会構造などを知ることができます。また、大木式土器の研究は、日本の縄文文化全体の解明にも貢献するものと期待されています。

関連遺跡

大木式土器が出土する主な遺跡としては、以下のものが挙げられます。

大木囲貝塚（標式遺跡）
南境貝塚
三神峯遺跡
糠塚貝塚
小梁川遺跡
大梁川遺跡

これらの遺跡からは、大木式土器の他にも、石器や骨角器、貝塚など、当時の人々の生活に関する様々な遺物が出土しており、大木式土器研究の重要な手がかりとなっています。

参考文献

大塚初重・戸沢充則編『最新日本考古学用語辞典』柏書房、1996年6月。ISBN 4-7601-1302-9

関連項目

円筒土器
円筒土器文化圏

外部リンク

歴史に触れ、故郷を知る「2つの縄文文化」（岩手県）

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