大東輿地図

『大東輿地図』の概要

『大東輿地図』（だいとうよちず）は、1861年に金正浩によって創作された、李氏朝鮮の全国地図です。この地図は、朝鮮半島全域を対象としており、姉妹編として『青丘図』の2巻と『大東地志』の32巻が関連しています。その完成度は高く、当時の地理情報を正確に反映しているとされています。

作品の特性

地図は、木版によって製作され、全22貼で表現されています。縮尺は16万2000分の1ですが、いくつかの地理的要素には若干のズレが見られます。例を挙げると、中江鎮が本来の位置よりも北にずれており、鬱陵島は実際よりも南に描かれています。ただし、これらを除けば、全体的には非常に正確に描写されています。この地図の在り方は、金正浩が30年以上の歳月をかけて全国を巡り、精緻なデータを元にしていると伝えられています。

一方で、近年の研究では、金正浩が自らの足で半島全体を踏破したわけではなく、先行地図を参考にしてある程度の補足や修正を行って制作したとされています。それにもかかわらず、『大東輿地図』は地形表示の新手法を開発し、詳細な山や川の情報を加えるなど、当時の他の地図に見られない革新性を持っています。この地図をすべてつなげると、横3メートル、縦7メートルという大きさになります。

地図の内容

『大東輿地図』には、山脈、河川、島々、港口、航路、行政区の境界、交通網、通信、さらには歴史的な遺跡などが詳細に描かれています。この作品は李氏朝鮮の地図の中でも最高傑作と称され、前近代の歴史や地理研究において極めて重要な資材となっています。

この地図は『青丘図』を基にしているが、サイズの面で進化が見られ、南北100里、東西70里から、南北120里、東西80里に改良されています。山の筋や河川の網は非常に正確に描かれており、実際の旅においても忠実な情報を提供しています。

その他の特徴

また、持ち運びがしやすいスケールである90万分の1の『大東輿地全図』も木版で刊行されており、これもまた注目に値します。このような背景から、朝鮮取引を行う対馬藩の宗氏に官職を授与したことを受け、この地図には対馬が記載されていますが、その形状や位置は不正確であるとされています。

『大東輿地図』は発表から長い年月を経て、現在では大韓民国指定の宝物第850号に指定されています。現在、誠信女子大学やソウル歴史博物館、居昌博物館（慶尚南道の有形文化財第275号）に所蔵されています。

紙幣への採用

2007年12月、韓国銀行は2009年から100,000ウォンの高額紙幣に金九の肖像と共にこの地図を使用する計画を公表しました。しかし、1月には計画が中止されました。この原因は、金九の南北統一政府樹立の主張が、当時の保守政権である李明博政権に好意的に受け止められなかったためとも指摘されています。

領土問題

『大東輿地図』には、中国との間でたびたび領有権が問題視される「間島」（現在の中国の延辺朝鮮族自治州）が記載されていません。このことが中国側に有利な証拠とされ、朝鮮王朝が清国の間島領有を認めていたとする主張に繋がっています。また、鬱陵島の詳細図の隣には「于山」と記された島が描かれています。これにより、現在の竹島（韓国名：独島）との領有権問題が生じています。

以上が、『大東輿地図』に関する概説です。李氏朝鮮の地理情報を理解する上で、この地図は欠かせない重要な資料といえるでしょう。

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