大林寺 (中津川市)

嶺松山 大林寺

大林寺は、岐阜県中津川市千旦林に位置する曹洞宗の寺院です。山号は嶺松山で、恵那三十三観音霊場の五番札所として知られています。この寺は、恵那地域における曹洞宗の法源地として重要な役割を果たしてきました。

歴史

禅洞庵から禅洞寺へ

大林寺の歴史は、天正8年（1580年）に甲斐国の清光寺の五世住職であった照庵玄光が、戦乱を避けてこの地に移り住み、坂本神社の別当寺に草庵を結んだことに始まります。この草庵は禅洞庵と名付けられました。照庵玄光はこの地で没し、その後、慶長13年（1608年）には、清光寺から吉州玄貞と徳外玄隆が訪れて教えを広めました。

徳外玄隆は、各地で布教活動を行い、元和8年（1622年）には寺名を禅洞寺と改めました。また、寛永3年（1626年）に、恵那郡の瑞現寺が火災で焼失した際には、徳外玄隆の尽力により、寛永18年（1641年）に復興を遂げています。

大林寺の創建

禅洞寺が手狭になったため、徳外玄隆は寺を移築し再興することを決意しました。寛永10年（1633年）には、林常慶を開基として、新たに嶺松山大林寺と改名し、洞垣外に建立しました。照庵玄光を開山、吉州玄貞を二世、徳外玄隆を三世としています。徳外玄隆は、恵那郡内に高安寺、円通寺、長徳寺を開き、末寺としました。また、境内には北野天満宮を祀りました。

江戸時代の過去帳には、中山道沿いの地域に多くの檀家が存在していたことが記録されています。寺領は、尾張藩の重臣である山村甚兵衛家からの寄進によるものでした。

近代の変遷

元禄10年（1697年）には大洪水により大破しましたが、七世の月堂玄定が復興を計画し、享保12年（1727年）に伽藍が完成しました。しかし、大正14年（1925年）には落雷により、山門と位牌堂を残して本堂や庫裡などの多くの建物を焼失してしまいます。その後、昭和9年（1934年）までに現在地に移転し、建物を再建しました。幸いにも焼失を免れた山門は、大正11年（1922年）に総シオジ材で造られた楼門で、移築されたものです。本尊の聖観世音菩薩は、名古屋松坂屋伊藤家の祖である貞春尼からの寄贈です。

太平洋戦争中には寺鐘を供出しましたが、現在の寺鐘は昭和24年（1949年）に鋳造されたものです。

境内

境内には、白山妙理大権現、北野天満大自在天神、愛宕山大権現が合祀されています。これらの神々は、それぞれ棟札に記録されており、以下の通り勧請されました。

白山妙理大権現：天正8年（1580年）5月18日、照庵玄光により勧請
北野天満大自在天神：寛永8年（1631年）9月18日、徳外玄隆により勧請
愛宕山大権現：享保3年（1718年）1月18日、月堂玄定により勧請

また、文政元年（1818年）に勧請された津島神社も祀られています。境内には、戦国時代の豪傑で千旦林城主であった吉村源斎が、木曽川から運んで来たと伝わる「源斎力石」があります。さらに、昭和51年（1976年）にコスモス短歌会の全国大会で大林寺を訪れた宮柊二の歌碑も建立されています。

寺宝

寺宝としては、本尊である聖観世音菩薩像（江戸時代作、作者不明）、承陽大師木像、開山照庵玄光和尚木像、常済大師木像などが所蔵されています。また、徳外玄隆の墨蹟や画像、元禄年間の筆写による正法眼蔵全巻なども伝わっています。

末寺

大林寺の末寺には、以下の寺院があります。

高安寺（恵那市）
圓通寺（恵那市）
長徳寺（恵那市）
瑞現寺（恵那市）
[自法寺]

脚注

『中津川市史　中巻Ⅱ』　第五編　近世(二) 第八章　寺社　第二節　寺院　ニ　近世の寺院 大林寺　p1628～p1629　1988年
『恵那郡史』　第八篇　現代　第四十一章　人文の発展(一)　【各宗寺院】　p612～p619　恵那郡教育会　1926年
* 『岐阜県百寺』　大林寺　p189　郷土出版社　1987年

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