大森勝久

大森勝久：革命から自由主義へ転向したテロリストの生涯

大森勝久（1949年9月7日 - ）は、北海道庁爆破事件の実行犯として死刑判決を受けた人物です。しかし、彼の人生は単なるテロリストという一言では語り尽くせません。新左翼活動家から保守思想への転向、そして冤罪の可能性を訴え続ける彼の複雑な人物像に迫ります。

生い立ちと左翼思想への傾倒

岐阜県多治見市で生まれた大森は、幼少期にプロ野球選手を目指していました。しかし、視力の低下によりその夢を諦め、学業に励むようになります。両親は皇室への敬意は抱いていたものの、政治思想には関心が薄く、大森自身も高校時代までは政治とは無縁でした。

転機が訪れたのは、岐阜大学教育学部に入学して間もなくのことです。大学紛争が激化する社会情勢の中、大森は左翼思想に傾倒し、ノンセクト・ラジカルとしてデモに参加するようになります。太田竜の『辺境最深部に向かって退却せよ!』に感銘を受け、教員の職を辞して土方仕事に従事。窮民革命を目指し、日雇い労働者運動に参加します。

北海道庁爆破事件と逮捕

釜ヶ崎での労働運動を経て北海道に渡った大森は、アイヌ民族の現状を目の当たりにし、更なる活動資金を得るために様々な職を転々とします。1975年、東アジア反日武装戦線のメンバーが一斉検挙されたことを受け、爆弾テロの実行を急ぎますが、除草剤の入手が困難となり計画は頓挫。その矢先の1976年3月2日に北海道庁爆破事件が発生しました。

1976年8月、大森は爆発物取締罰則違反容疑で逮捕され、その後北海道庁爆破事件の実行犯として再逮捕されます。裁判では一貫して無罪を主張しますが、状況証拠や目撃証言から、1983年に死刑判決が言い渡されました。控訴、上告も棄却され、1994年に死刑が確定しました。

獄中からの思想転換

獄中で様々な文献を読むうちに、大森は共産主義の実態を知り、民主主義を否定する思想に疑問を抱くようになります。そして、1997年頃には左翼思想から完全に脱却し、「真正自由主義者」としての立場を確立。かつて唱えていた反日亡国論を「悪魔のような思想」とまで否定するようになりました。

現在と冤罪の可能性

現在、大森は死刑囚として札幌拘置支所に収監されています。アムネスティ・インターナショナル日本は、彼を「冤罪の可能性が最も高い7名の死刑囚」の一人に指定しています。彼は獄中結婚した妻と面会を続け、書籍や情報誌を読み、論文を発表するなど、積極的に活動しています。彼のホームページでは、現在の政治に対する評論を読むことができます。

大森勝久の人生は、革命思想に染まった若者が、過ちを犯し、そして思想的な転換を経て、自らの過去と向き合いながら生きる姿を描き出しています。彼の事件、裁判、そして獄中での活動は、日本の社会運動史、冤罪問題、そして人間の思想の変化について、深く考えさせられる物語です。

彼の主張する冤罪については、様々な意見があります。しかし、彼の人生を深く知ることで、私たちはより多角的な視点から、社会、正義、そして人間の可能性について考えることができるのではないでしょうか。

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