大橋新太郎

大橋新太郎

大橋新太郎は、1863年に生まれ、1944年に亡くなった実業家であり政治家です。父である大橋佐平と共に博文館を創業し、出版事業で大きな成功を収めました。博文館は、日清戦争や日露戦争の報道で大きな利益を得ただけでなく、「文芸倶楽部」などの雑誌を通じて文学界にも大きな影響を与えました。また、百科全書や古典文学の注釈本など、幅広い分野の出版物を手掛け、近代出版界における地位を確立しました。

新太郎は、父の事業を引き継ぐだけでなく、印刷から販売までを手掛ける出版コンツェルンを築き上げました。さらに、製造業、エネルギー事業、交通事業などにも積極的に関与し、国会議員としても活躍するなど、幅広い分野で才能を発揮しました。

しかし、共同印刷では労働争議が頻発し、1926年には大規模な争議が発生しました。新太郎は、その対応に苦慮したとされています。

また、父佐平の遺志を継いで建設した私設大橋図書館は、一般市民に広く利用され、文化の発展に貢献しました。金沢の別荘近くの称名寺の荒廃を憂い、多額の寄付を行い、境内の整備に尽力したほか、神奈川県立金沢文庫の設立にも資金を提供しました。これらの文化的な公共事業への貢献は、今もなお高く評価されています。

大正時代以降、新太郎は財界活動に注力し、出版活動は子弟に委ねました。そのため、円本ブームに乗り遅れ、講談社や岩波書店などの後発の出版社に押され、博文館は出版界における地位を低下させました。新太郎の死後、後継体制が整わないまま敗戦を迎え、財閥解体令によって大橋コンツェルンは解体され、博文館も消滅しました。しかし、戦後、「博文館日記」の復刊を求める声に応え、共同印刷の一角で博文館新社が再建され、現在に至っています。

経歴

1863年 - 越後国長岡で生まれる。
1871年 - 長岡小学校に入学。
1872年 - 長岡洋学校に入学。
1875年 - 新潟師範学校講習所に入学。
1876年 - 父佐平と共に上京し、同人社に入学。
1879年 - 父佐平が新潟で書籍販売業を開始、新太郎も従事。
1887年 - 父佐平が東京で博文館を創業、新太郎も出版事業を展開。
1892年 - 日本橋区に本社を設置。
1895年 - 「文芸倶楽部」「太陽」「少年世界」の三大雑誌を創刊。
1896年 - 「博文館日記」を初めて創刊。
1897年 - 妻やま子と離縁、須磨子と再婚。
1898年 - 東京瓦斯専務取締役に就任。
1899年 - 博進社工場を新設（後の共同印刷）。
1901年 - 父佐平が死去。遺志により大橋図書館を設置。
1902年 - 衆議院議員に当選。
1903年 - 王子製紙の取締役に就任。
1908年 - 欧米を視察。
1912年 - 日本鋼管の取締役に就任。
1914年 - 東京市会議員に当選。
1915年 - 京城電気会社の社長に就任。
1920年 - 株式会社大橋本店を創立し、頭取となる。
1921年 - 日本勧業銀行の参与理事に就任。
1924年 - 博文館印刷所でストライキ発生。
1926年 - 関東大震災で焼失した大橋図書館を再建。貴族院議員に勅選。
1927年 - 各種会社の取締役に就任。「太陽」が終刊。
1928年 - 各種会社の取締役に就任。
1930年 - 神奈川県立金沢文庫が完成。
1933年 - 各種会社の取締役に就任。「文芸倶楽部」「少年世界」が終刊。
1934年 - 勲四等に叙せられる。
1935年 - 日本工業倶楽部会長に就任。
1936年 - 日本硝子会社取締役会長に就任。
1941年 - 正五位に叙せられる。
1944年 - 死去。

主な刊行雑誌

「日本之少年」
「江戸会誌」
「太陽」
「少年世界」
「文芸倶楽部」
「中学世界」
「幼年世界」
「女学世界」
「写真画報」
「幼年画報」
「少女世界」
「文章世界」
「英語世界」
「数学世界」
「冒険世界」
「演芸倶楽部」
「婦女画報」
「講談雑誌」
「家庭雑誌」
「探偵小説」
「新少年」

主な出版物・シリーズ物

『日本文学全書』
『日本歌学全書』
『温知叢書』
『日本文庫』
『日本歴史読本』
『少年文学』
『帝国文庫』
『日清戦争実記』
『一葉全集』
『帝国百科全書』
『通俗百科全書』
『日用百科全書』
『独歩全集』

親族

大橋佐平 - 父、博文館創業者。
大橋やま子 - 先妻。
大橋須磨子 - 後妻。
大橋進一 - 長男、第3代博文館主。
大橋勇吉 - 三男、第2代博文館主。
大橋正雄 - 四男。
大橋武雄 - 五男。
大橋達雄 - 六男。
伊藤文子 - 三女。
金子豊子 - 五女。
平沼澄子 - 七女。
大橋省吾 - 弟。
窪田善八郞 - 異母弟。
大橋こう - 妹。
大橋乙羽 - 義弟。
山本留次 - 従弟。

関連文献

坪谷善四郎『大橋新太郎伝』
坪谷善四郎『大橋図書館四十年史』
坪谷善四郎『大橋佐平翁伝』

関連項目

硯友社
金色夜叉 - 「金色夜叉」の登場人物のモデル。

外部リンク

経済（学）あれこれ～経済現象および政策に関する意見・断想・批判
広報よこはま・金沢区版2013年7月号 金沢偉人伝～大橋新太郎
* 『社史と伝記にみる日本の実業家～人物データと文献案内』神奈川県立図書館・神奈川県立川崎図書館編

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