大王崎

大王崎（だいおうざき）

大王崎は、三重県志摩市大王町波切に位置する、太平洋の熊野灘と遠州灘を隔てる岬です。この岬は、その景観の美しさだけでなく、歴史的にも重要な場所として知られています。

概要

大王崎は、1927年（昭和2年）に建てられた大王埼灯台のある城山から、波切神社が鎮座する宮山までを指します。かつてこの地には大王崎古墳が存在しましたが、現在は消滅しています。

航海の難所

大王崎周辺は暗礁や岩礁が多く、古くから「伊勢の神崎、国崎の鎧、波切大王なけりゃよい」と歌われるほどの航海の難所でした。そのため、多くの船がこの地で遭難し、悲劇的な事件も発生しています。天保2年（1832年）には、積荷を横領するために偽装難破事件（波切騒動）が起こりました。この事件では、難破を偽装した船頭だけでなく、取り調べに来た役人を殺害した住民も処刑されるという痛ましい結末を迎えました。役人殺害の動機については、要求された賄賂を支払ったにもかかわらず便宜を図らなかったことへの恨みとする説と、泥棒と誤認して取り押さえた結果の過失致死とする説があります。高野澄の著書『伊勢神宮の謎』や『大王町史』では後者の説を支持しており、吉村昭の小説『朱の丸御用船』も後者の説を基に物語が展開されています。

大王埼灯台

大王埼灯台は、「波切の灯台」とも呼ばれ、2006年の時点で日本に14ある参観灯台の一つです。1998年（平成10年）には「日本の灯台50選」にも選ばれ、波切の重要な観光資源となっています。灯台からは、太平洋の雄大な景色を一望することができます。

文化・芸術との関わり

明治時代から、千種掃雲や小野竹喬など多くの画家がこの地を訪れ、風景を描いてきました。特に昭和以降は、灯台のある風景を好む画家が多く訪れたことから、1996年（平成8年）には、当時の志摩郡大王町が「絵かきの町」を宣言しました。また、小説では川口松太郎の『女人武蔵』や田山花袋の『南船北馬』の舞台となり、1912年（明治45年／大正元年）には民俗学者である折口信夫がこの地を訪れ、マレビト説の着想を得ました。さらに、1950年代から2007年末にかけては、小津安二郎監督の『浮草』など、数々の映画のロケ地にもなりました。

歴史

南北朝時代から室町時代にかけて、九鬼氏5代の居城となった波切城跡が城山にあります。この地は、戦国大名である九鬼嘉隆の生誕の地とする説も存在します。

イベント

ゴールデンウィークには、大王崎観光駐車場で「かつお祭り」が開催されます。2013年（平成25年）には、カツオを使った郷土料理（手こね寿司、かつお茶漬けなど）の振る舞いや、木製のカツオを釣り上げるゲームが行われ、多くの人々で賑わいました。

脚注

大王埼灯台（鳥羽海上保安本部）

関連項目

伊勢志摩国立公園
* 小さき勇者たち〜ガメラ〜 - 波切を主要な舞台の一つとして扱っている。

大王崎は、美しい自然と歴史、文化が融合した魅力的な場所です。灯台からの眺めは息をのむほど美しく、訪れる人々を魅了し続けています。

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