大田神社 (京都市)

大田神社

大田神社は、京都府京都市北区上賀茂本山に位置する神社です。式内社であり、現在は賀茂別雷神社（上賀茂神社）の境外摂社（第三摂社）として知られています。古くは「恩多社（おんたしゃ）」とも呼ばれていました。

上賀茂神社の東約500メートルの場所に鎮座しています。

祭神

祭神は次の1柱です。

天鈿女命（あめのうずめのみこと）

賀茂地域で最も古い神社と伝えられており、長寿のご利益があるとされています。

歴史

創建時期は不明です。賀茂県主（かものあがたぬし）がこの地に移住する以前から、先住民によって祀られていたとも言われていますが、詳細は明らかではありません。

延長5年（927年）に成立した『延喜式』神名帳には、山城国愛宕郡に「太田神社」（写本によっては「大田神社」）として記載され、式内社に列せられています。

境内

社殿

本殿・拝殿はともに寛永5年（1628年）に造り替えられました。本殿は一間社流造で、屋根は檜皮葺です。

拝殿は「割拝殿」（中央が吹き抜けて通れる拝殿）という古い形式で、屋根は本殿と同じく檜皮葺です。社務記には天授3年（1377年）3月に「大田拝殿転倒す」との記述があり、それ以前に建てられたものと考えられます。

蛇の枕

鳥居前に架かる石橋の右側下の水面から、小さな石が顔をのぞかせています。この石は「蛇の枕」または「雨石」と呼ばれ、蛇が枕にしていたと伝えられています。蛇は雨を降らせる生き物とされ、この蛇がいる枕のもとに行けば雨乞いができると考えられていました。儀式では、この枕石を農具（鉄器）などで叩いて行われます。これは、枕を叩かれた蛇が怒って雨を降らせると考えられていたためです。

摂末社

白鬚社 - 祭神：猿田彦命（さるたひこのみこと）
百大夫社 - 祭神：船玉神（ふなたまのかみ）
鎮守社 - 祭神：大国主神（おおくにぬしのかみ）、少彦名神（すくなひこのかみ）
福徳社 - 祭神：福徳神

上記4社は、いずれも上賀茂神社においても境外末社に位置づけられています。

祭事

御内儀祈願祭（ごないぎきがんさい）（1月10日、5月10日、9月10日）
春祭（4月10日）

境内には終日氏子が生け花を奉納し、祈祷が行われます。祈祷時には、京都市登録無形民俗文化財である「里神楽」（チャンポン神楽）が奉納されます。大田神社が寿命長久の社であることから、高齢者によって囃し舞われ、動きが少ないことが特徴です。「チャンポン神楽」という名前は、その音色から生まれたものとされています。
秋祭（11月10日）

日中は祈祷・神楽が受け付けられ、夕刻からは火焚祭が催されます。終日、境内では菊花展が開かれます。

大田ノ沢のカキツバタ群落

参道の脇にある「大田ノ沢」には、約2000平方メートルの敷地に約25,000株のカキツバタが自生しており、「大田ノ沢のカキツバタ群落」と呼ばれています。大田ノ沢は平安時代からの名所であり、尾形光琳の『燕子花図』のモチーフになったという言い伝えもあります。毎年5月上旬から中旬にかけて開花し、沢一面に濃淡さまざまな紫色の花が咲き、多くの観光客を魅了します。

大田ノ沢は古代に深泥池と同様に沼地であったとされ、かつて京都盆地が湖であった頃の面影を残すものとして、カキツバタ群落とともに昭和14年（1939年）に国の天然記念物に指定されました。

文治6年（1190年）には、『千載和歌集』の編者である藤原俊成が、紫一色に染まる様子を一途な恋心に例えて歌を詠んでいます。

満池・干池伝説

雨乞いの際、大田の池（大田の沢の別名）の水を入れ替えれば雨が降り、長雨の際には、神供寺の池（かつて上賀茂神社の神宮寺にあった池）の水を入れ替えれば雨が止むと伝えられていました。干珠・満珠になぞらえられ、大田の池は満池、神供寺の池は干池と呼ばれていました。

かつて、池には八大竜王が祀られ、八池のうちの一つに数えられていました。

大田の小径

境内後方には、「大田の小径」と呼ばれる全長約750mの散策路が続いています。この散策路は、平成17年（2005年）に地域住民で構成される「上賀茂自治連合会」と「上賀茂まちづくり委員会」によって整備されました。

神社背後の小山には、未舗装ながらも整備された山道が続いています。散策路の両脇にはロープが張られているほか、途中の数か所に標識が設けられており、迷うことなく散策できます。北大路魯山人が愛したという山つつじが出迎える山道を進むと、展望箇所が設けられており、天候の良い日には京都タワーや伏見桃山城を遠望できます。杉林を抜けて散策路を進むことで、岡本口（東側登り口、上賀茂岡本町地内）にたどり着きます。

「大田の小径」の案内板は、大田神社側は上賀茂神社宮司、岡本口側は京都市北区長による揮毫です。

文化財

国の天然記念物：大田ノ沢のカキツバタ群落 - 昭和14年9月7日指定
京都市登録無形民俗文化財：大田神社の巫女神楽 - 昭和62年5月1日登録

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