大畑駅

大畑駅 (おこばえき)

大畑駅は、熊本県人吉市大野町に位置する、九州旅客鉄道（JR九州）肥薩線の駅です。特筆すべきは、日本で唯一、ループ線の中にスイッチバックを併せ持つという、非常に珍しい構造を持つ駅である点です。

歴史

開業当初、大畑駅は蒸気機関車の給水所および信号所として重要な役割を担っていました。駅周辺には人家がほとんどなく、最寄りの集落まで徒歩で1時間近くかかるという立地です。駅名の「こば」は焼畑を意味し、かつてこの地で大規模な焼畑が行われていたことが由来とされています。

人吉駅から続く勾配を登ってきた蒸気機関車にとって、大畑駅での給水は不可欠でした。また、トンネルの連続で煤に汚れた乗客たちが、駅ホームの湧水で顔や手を洗っていたという逸話も残っています。人吉駅から大畑駅までの約10kmの区間では、D51形蒸気機関車が1トンもの石炭を消費し、1分間に250リットルもの水をボイラーに送り続けていたとされています。特に、1927年まではこのルートが鹿児島本線の一部であり、多くの貨物列車が行き交っていました。

大畑駅で小休止した後、列車はさらに険しい矢岳駅への勾配に挑んでいました。スイッチバックが設けられた理由は、勾配の途中に平坦な場所を作り、そこに停車場を建設する必要があったためです。

年表

1909年（明治42年）12月26日：鹿児島本線所属駅として鉄道院が開設。
1927年（昭和2年）10月17日：海岸ルート（川内本線）全通に伴い肥薩線所属に変更。
1974年（昭和49年）10月1日：貨物取扱廃止。
1984年（昭和59年）2月1日：荷物扱い廃止。
1986年（昭和61年）11月1日：電子閉塞装置導入により無人化。
1987年（昭和62年）4月1日：国鉄分割民営化により九州旅客鉄道が継承。
2007年（平成19年）11月30日：大畑駅、周辺の鉄道施設遺産、石造りの給水塔、および朝顔型噴水が南九州近代化産業遺産群の物資輸送関連遺産の一つとして選ばれる。
2018年（平成30年）9月8日：駅構内の旧保線詰所跡を改装したレストランが開業。

駅構造

大畑駅は、通過が不可能なスイッチバック構造を持つため、かつて運行されていた優等列車も必ず停車する必要がありました。ただし、特急「おおよど」は運転停車のみで、乗客の乗降は行われませんでした。

駅は島式ホーム1面2線を備え、ホームから構内踏切を渡って駅舎へ行くことができます。木造の駅舎は開業当時のもので、他の駅と似た外観をしていますが、大畑駅では観光列車「いさぶろう・しんぺい」のリニューアルに合わせて、窓枠を木造に戻すなど、開業当時の雰囲気を再現する改装が施されました。なお、大畑駅は無人駅ですが、発車ベルが設置されています。

のりば

駅のホームは1面2線で、列車はスイッチバックを使用して駅に進入します。

付記事項

近年、人吉駅以北へ直通する列車は設定されていませんでしたが、2016年3月のダイヤ改正以降、「いさぶろう1号」と「しんぺい4号」が熊本駅まで、普通列車が上下各1本八代駅まで直通運転を行っています。

2000年（平成12年）3月11日までは、急行「えびの」が停車していました。

スイッチバック

大畑駅のスイッチバックは、列車の進行方向を反転させるための特殊な構造です。これにより、急勾配の路線でも列車が安全に運行できます。この構造は、鉄道ファンにとって非常に魅力的な見どころとなっています。

駅周辺

大畑駅周辺には、以下のような観光スポットがあります。

人吉梅園
大野渓谷
熊本県道189号大畑停車場線
宮地嶽神社：2014年に撤去された人吉駅の跨線橋の支柱を鳥居として再利用しています。

その他

2004年夏には、青春18きっぷのポスターのモデル駅に選ばれました。

位置情報

（緯度経度情報は省略）

隣の駅

※観光列車「いさぶろう・しんぺい」の停車駅は列車記事を参照してください。

九州旅客鉄道（JR九州）

■肥薩線

人吉駅 - 大畑駅 - 矢岳駅

脚注

（脚注情報は省略）

参考文献

曽根悟（監修）（著）、朝日新聞出版分冊百科編集部（編集）（編）「肥薩線・吉都線・三角線」『週刊 歴史でめぐる鉄道全路線 国鉄・JR』第2号、朝日新聞出版、2009年7月19日。

関連項目

日本の[[鉄道駅一覧]]
夏目友人帳

外部リンク

大畑駅（駅情報） - 九州旅客鉄道

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